「では、わざわざここに来て雨を降らしくれるとでも言うのか?」
「うんにゃ。水がどんどん出る井戸を掘ってやろう」
「井戸?」
「ああ。この杭州の地面の深い下のある水をくみ上げる井戸じゃ」
「この杭州にはそんなものはないぞ」
「はは!わしは。杭州にこれまでにないものを掘るのじゃ」
「ふーん!よし。そこまでいうなら、やってみろ。しかし言っておくがもししくじれば、命はないぞ!」
「なにをしつこい!わしは死などは恐れてはおらん」
「では、さっそくその井戸とやらをほてもらおう」
「ああ。で、その前にわしに支度をさせろ」
ということになり、この爺さんはその足でどこかへ行ってしまった。
実は、じいさんは郊外にある家に戻り、五十を過ぎた息子に竹の駕籠を作らせた。
「とうちゃんよ。竹の駕籠なんか作ってどうすんだよ」
「わしのもう年じゃ。駕籠に乗って水を探すんじゃよ」
こうして息子が駕籠を作ったので、爺さんは畑にいる二十幾つの孫を呼び、「二本の竹を持ってお前の父さんと一緒にわしを担ぐのじゃ」と言いつけた。
「おじいちゃん、駕籠に乗るの?」
「そうじゃ。駕籠に乗るんじゃ」
「どこへ?」
「町の城壁の上まで担いでくれ」
こして息子と孫は爺さんを駕籠で担ぎ、杭州の城壁の上ぐるぐる回り、なんと三日目に城壁の角の近くからの地面から煙でも霧でもないものがかすかに吹き出ているのを見つけた。
「うん!あそこはおかしいのう。空には白い雲が浮かんでおる。きっと水の竜があの下にいるに違いない。あそこまでいってくれ」
こうして爺さんはその城壁近くにきて駕籠をおり、暫くその煙や霧でもないものが出ているところを見てから息子と孫に行った。
「いいか。おまえたち多くの男たちをここに呼んでくれ。ここに井戸を掘るから、穴を掘る道具と長い縄を忘れんようにとな。その前に役所に行ってかの老人がここで井戸を掘るというのじゃ。奴らはわしのことを知っておる。どうせ役人も一緒に見物にくるかもしれんからな」
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