残された孫はおいおい鳴きながら父の亡骸を背負い、丘の爺さんの墓の横に埋め、泣きつづけた。
「おじいちゃん、父さん。どうしたんだよ。どうしておいらを置いてけぼりにしていってしまったんだよ」
しばらくして孫は泣きつかれたのか、お墓の前で寝てしまった。そして爺さんと父の夢を見た。夢の中で爺さんと父は言う。
「いいか。あそこら一帯の地の下には必ず水の竜がいるんだ。お前はまだ若いが、あの煙や霧でもないものがゆっくり噴出していたのが見えただろう。頼む、爺さんと父に代わってきっと水の出る井戸を掘ってくれ。そうでなければわしらは無駄死にしたことになる。わしらの苦心を無にしてくれるな」
目を覚ました孫は、まったくその通りだと思い、必ず水の出る井戸を掘る決意を固めた。
こうして翌日の朝早くから孫は、かの城壁の上へあがり、爺さんと父がしたようにじっくりと周りを見続けた。そして次の日、かの城壁の角の近くあたりから、これまでより濃い霧みたいなものが吹き出、空の雲もどんどん多くなるのをみた孫は、今度こそ間違いないと、再び役所に行ってこのことを役人に告げた。ところが役人はこういう。
「お前の一家はどうかしてるぞ。水が出る井戸を掘ると言い張り、これまでにお前の爺さんと父が命をうしなっとる。それとも何か、お前までがそんなに死にたいのか?水がなくてみんなが苦しんでいるのじゃ。そんなときに無駄な力を出させるというのか!」
「ちがいます!本当に地の下には水があるのです。こんどこそ、きっと水が出てきます。早くしないと、もっと多くの人が倒れるでしょう」
「ふん!一家三人とも頑固な奴じゃな!仕方がない!しかし、いっておくぞ、今度も失敗したら、お前も爺さんと親父のように命はないものと思え!いいな、それだけは覚悟しておけよ!」
「わかりました!」ときっぱり答えた孫は、ほんとに死ぬ覚悟でいた。そして役所の許しを得たといって町の男たちを呼びに行った。
実はこれまで二回も水が出てこなかったので、男たちも水などでないと思っていたが、そのたびに人が命を失ったのでびっくりしており、今度は孫までが命を張って水は必ず出ると一生懸命にいうではないか。そこで、いくらか哀れに思い、その上「水がない日々をこれ以上送るのはもうごめんだ。もしかしたら今度こそほんとに出るかもしれない」と孫について男たちはかの城壁の下まで来た。
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