京劇は中国が世界に誇る文化です。きらびやかな衣裳、ダイナミックな役者さんの動き、ドラの音、本場の雰囲気を味わいたい、と思う人はたくさんいます。しかし、短い日程で中国旅行にやってくる人たちにとっては、公演日程などタイミングが合わないこともあり、あきらめざるを得ません。
梅蘭芳という京劇の役者の名前を聞いたことがあるでしょうか。この人の名前をつけた梅蘭芳記念館という小さな博物館が北京にあります。今回はここをご案内しましょう。
1994年から館長を務める劉占文さんは、社会、文化教育の基地としても記念館を役立たせたいと頑張っています。劉さんの話や館の資料から京劇の歴史を簡単にたどってみます。京劇は、歌と踊りと伴奏が一体となった総合芸術です。歌やせりふ、これにしぐさ、立ち回りといった動きが加わります。200年に及ぶ歴史を経て、大衆に愛されるようになり、北京や上海には専用の劇場がたくさんありました。北京に残るそんな劇場の一つを訪ねてみると、観衆はスイカの種をかじり、お茶をすすりながら、舞台を楽しんでいます。
さて、梅蘭芳は1894年、北京の前門、庶民の街に生まれました。祖父が清朝時代の著名な京劇役者、父も役者、母や祖母も役者さんの娘というように、まさに梨園の名門に生まれ、役者にはなるべくしてなった、ともいえるでしょう。
5歳の時に胡同にある私塾に通い始め、8歳から正式に稽古に励みました。梅蘭芳は女形の役者として名をはせませんが、このころから女形のしぐさの勉強をしたそうです。10歳の時、北京で初舞台を踏みました。
20代に入ってからは創作にも数多く挑戦、1919年、25歳の時には東京、大阪などで1ヶ月の日本公演をしました。その後、2回合わせて3回、梅蘭芳は日本公演をしました。この公演を見た芥川龍之介は梅蘭芳を作品の中で絶賛しています。
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