これを聞いたばあさんが難しい顔して立っていると、外から戸を叩く音がしたので息子が今頃誰だと戸を開けた。すると四人のがっちりした男が立っており、そのうしろに人の乗る駕籠がある。息子がびっくりしていると、一人の男が入ってきてばあさんにお辞儀して言う。
「こんなに遅くお邪魔してお許しくだされ。実は難産している女子がおりまして、困っております。産婆を呼んだもののやはりうまくいかないので、こうして、こんな夜半にばあさまを出迎えに参った次第。どうか、今すぐ来てくだされ」
「それは大変。手遅れになると、赤子だけでなく、母親までも危ないからね」と正直なばあさんは、いまさっき起こった不思議なことなどかまわず、部屋に入って支度をすると、横で呆然としている息子に、小声で「じゃあ、行ってくるかなね。鳥かごのことは人に言うんじゃないよ」と言い残し、遠慮せずに駕籠に乗ったので、男たちは駕籠を担いで走るように暗闇に中に消えていった。
こちら息子、親孝行ものだから、母親の言うとおりにしようと仕方なく部屋にはいると、目を覚ました嫁がきく。
「どうしたの?鳥がごとか、お産だとか?」
そこでいまさっきのことを話すと「じゃあ。その四人の男が鳥かごを盗んだのじゃないのかえ?」
「いや!俺が戸を閉めてからかごがなくなったんだ。その間に誰かが塀を飛び越える気配もなかったし・・。それにあの人の乗る駕籠は空っぽみたいだったからな。また鳥かごのことは黙っていろと母さんが言ったぞ」
「でも・・。じゃあ、お母さんはどこへいったの?その駕籠はどこへ?」
「そ、そうだな!急なことなので、聞くのを忘れてた」
「あんた、なんだか心配だよ。今から探しに行きなさいよ。」
「うん!でも。こんな夜中にどこを探しいくんだ?」といいながら息子は、駕籠が消えた暗闇のほうに向かった。そして一生懸命に走ると、なんと遠くにいくらかの明かりがみえ、それにかすかに映った駕籠が行くのか見えたので、懸命に走り出し、大声で母を呼んだ。
|