乾隆帝は「春花とな」といってから張玉書のみて「いい名前じゃ。それに正直者じゃ。ごくろうだったな」という。
そこで張玉書はふざけて「どうです?旦那さま。この春花を義理の娘にしては?」
「うん?そうじゃな」と乾隆帝は正直な女子がうまいものを食わしてくれたのでうれしかったのか、すぐに首を縦に振った。
そこで張玉書が「そうとなったからには、何かの証となるものを渡さなければなりますまい」という。そこで乾隆帝は懐などを探ったがなにもない。
「いかん!」とつぶやいた乾隆帝、仕方なく持っていた扇子を春花に渡しながらいう。
「この扇子はたいしたものではないが、これから何か起きたらこれをもって町にこの張の老人を訪ねに行くといい」
こちら春花は、つまらないもの出して嫌われるかと思っていたのが、自分を義理の娘とし、さらに立派な扇子までくれたのだからびっくり。そこで恐る恐る聞いてみた。
「では。こちらのおじいさまのお宅はどちらでございますか?」
「ああ。わしの家か。町の南通りに黒い門のついた屋敷があり、門前には二匹の石の獅子が置いてある。わかったのう?何かあったら訪ねてこい」
こういって乾隆帝と張玉書は腰を上げてどこかに行ってしまった。
さて、この春花の夫は吉発といい、働き者であり野良仕事が得意で、その上に大の力持ち。なんと数百斤もある穀物を天秤棒で軽々とかついで走るように歩けるという。
と、その後のある日、吉発はいつものように天秤棒で、紐でくくった薪を担いで町に来て、それを金に換えものを買おうとしていた。しかし、その日は縁日だったせいか、町ではかなりの人出で、重い物を担いでいた吉発の天秤棒の一方の紐がなんとぶっつりと切れてしまい、その勢いで天秤棒の片方がすごい勢いで吉発のうしろを歩いていた男の頭にあたり、男はその場でぶっ倒れて気をうしなった。驚いた吉発は慌てて男を医者のところに運んだが、なんと、当たり所が悪かったのか、男は息を吹き返すことはできなかった。
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