さあ大変。人殺しだと吉発についてきた数人の野次馬が叫びだし、吉発は役人に連れて行かれ、県令の前に引き出され、人殺しの罪で牢獄にぶち込まれ、ただ、死刑を待つばかりとなってしまった。
これを知った妻の春花はびっくり仰天。孤児だった吉発の嫁となり、まだ子供もいなかったので自分は一人ぼっち。こうして大声で泣き出したが、親切なとなりの張姉さんたちがこれを聞いてすぐに来てくれ春花を慰めた。そのうちに張姉さんが春花が言ったことを思い出した。
「ねえ。春花、あんたいつか言ってたね。金持ちらしい二人がきて、飯を食わしてもらったお礼に立派な扇子をもらい、もし何か起こったらその扇子を持って、町に住んでいる張とか何とか言う人を訪ねに来るように言ってくれたとね。今ではほかの方法はないし、その人を訪ねに行ったら何とかなるかもしれないよ」
この話に春花はすぐに大事にしまっておいたかの扇子を箪笥の奥から取り出し、張姉さんと一緒に町に行った。そしてやっとのことで町の南通りに黒い門のついた屋敷をみつけ、門前には二匹の石の獅子が置いてるのをみて、恐る恐る門を叩いた。
すると門が開き、門番らしきものが怖い顔して出てきた。そこで春花は屋敷の主さまに会わしてくれというと、門番は一目で農民だとわかる春花と一緒にきた張姉さんを睨み、「お前らが、ご主人さまにあいたいだと?」という。そこで春花は、あの時もらった扇子をとりだし、これを見せればわかるというので門番が扇子を受け取ってみた。なんと、扇子には竜が描いてありそれも立派なものだ。そこで門番が屋敷の執事を呼んで扇子を見せたところ、執事はこれを見て驚き、慌てて主の張玉書に知らせた。
こちら書斎で本を読んでいた張玉書、これを知り扇子を見ると、あのときの扇子に間違いないので、「大事な客だ。応接間に通せ」と命じた。こうして春花と張姉さんは応接間に通され、始めてくる立派な屋敷の作りを見てびっくりしならが、あの張の老人は何者かを首を傾げ始めた。
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