今晩は、ご機嫌いかがでしょうか?林涛です。
今日のこの時間は、中国の変わった幽霊の話をご紹介しましょう。
まず、「幽明禄」という本からです。
「痩せた幽霊」
ある夜半、郊外の墓地の近くで、死んだばかりで幽霊になったというものが空腹のため元気なさそうにさまよっていた。ここではやせた幽霊と呼んでおこう。
そこへ太った幽霊がきた。それは20数年前になくなった友人だった。その幽霊は声をかけて言う。
「おう!おう!久しぶりじゃないか。ええ?それにしてもあんたひどく痩せているねえ」
「ああ、実は腹ペコでなあ。誰もこんなにがりがりに痩せたくないよう」
「それはそうだが」
「ところで、あんた景気がよさそうだね。どうしてそんなに太ってんだい?なんか秘訣でもあるのかい?教えてくれよ」
「そうだな。あんたとはむかし友だちだったからな、では教えてやろう」
「頼むよ」
「簡単さ。あんた人の家へいって悪さするんだよ。そうすれば、家の人たちは怖がって何が食べるものをくれるだろう」
「本当かい?」
「自分で行ってやってみな」
ということになり、痩せた幽霊はさっそく、町のはずれにある家に入った。痩せた幽霊は、何をしようと思ったが、庭の西側に小屋に臼があるのを見て、臼を引き始めた。もちろん夜半である。静まりかえった夜で誰もいないはずなのに、小屋の臼がひとりでに動きだしたのでこの家の人はびっくり。実はこの家の人は敬虔な仏教徒、家の主は起きてきた息子たちにいう。
「これはきっと、仏さまが我が家を助けに来て下されたに違いない。さ、獲れたばかりの麦を出してみんな粉にしてもらいなさい」
ということになり、この夜、痩せた幽霊は一晩中臼を引かされた。
翌日の夜、疲れと空腹のために元気をなくし、あの太った幽霊に騙されたと思ったやせた幽霊は、かの墓場近くで太った幽霊見つけて怒鳴った。
「なんだよ!うそつきやがって!ひどい目にあったぞ!」
「どうしたんだ?そんなに怒って?」
「あの家へ行って一晩中臼を引かされくたくただ!なにも食うものもらえなかったぞ!」
「そうか?おかしいなあ。あんたのやり方が下手だったんだよ」
「やり方が下手?」
「きっとそうだよ。今夜ほかの家へいってみな。手で引くような疲れるものはやめるんだな」
「わかった。手で引くものはやめよう」
ということになり、痩せた幽霊は遅くなってほかの家へ入った。
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