次は「志怪録」という書物からです。
「幽霊と話せる人」
いつのことかわらん。夏侯弘という人がいて、自分は幽霊を見ることができ、また幽霊と話すことが出来るという。ここでは夏さんとしておこう。
さて、当時、都の西の軍事をつかさどってる武将に謝尚という人物がいた。そしてこの謝尚の愛馬が急に死んだという。謝尚は以前から夏さんのことを耳にしていたので、夏さんを呼んだ。
「これは夏どの。実は愛馬が急死してのう。以前からそこもとは幽霊を見ることができ、また幽霊とも話せると聞いたが、わしは信じておらぬ。そこでどうじゃ。そこもとの実力をわしに見せてくれ」
「え?どうしろと申されるのですか?」
「何とか、わしの馬を生き返えらせてくれたら、そこもとの実力を信じ、また褒美をつかわそう」
「それは・・」
「いや。これはいい過ぎたか」
「それは・・」
「実は、愛馬をなくして困っておるんじゃ。夏どの、何とかしてくれんか?その礼は多く出すぞ」
ここまで言われては、夏さん、地方の軍事長官という役についている謝尚の顔をつぶすことも出来ないと思い「試してみましょう」と答えた。
そこで、夏さんは死んで倒れいる馬の前にしゃがんで、目をつぶった。するとある幽霊が馬の周りをうろうろしている。そこで夏さんは話しかけた。
「おい、ここで何をしておる」
「あ、これは夏さん。どうしてここへ?」
「いや。人に頼まれて死んだ馬の様子を見に来たまでのこと」
「この馬ですかい?」
「そうじゃ」
「この馬は、うちの親方が乗りたいというので、ちょっとの間、借りているんですよ」
「そうか。じゃあ、親方は馬をかえすつもりだろう?」
「もちろん。借りたといってましたからね」
「じゃあ、いつ返すつもりだ?」
「もういいころでしょう。お、馬がこちらに走ってきますよ」
そこで夏さんがそのほうを見ると、確かにそこに倒れているはずの馬がこちらに走ってくる。これを見て夏さんはその幽霊に礼をいい、目を開けて近くで様子を見ていた謝尚にいう。
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