「今夜は手は使わんぞ。と、何をしようかな」と痩せた幽霊は考えながら周りを見ると、庭に足を使って米をつく臼があった。
「うん?踏み臼か。これは手を使わんからいいだろう」と痩せた幽霊はさっそく踏み臼をぺったんぺったんと動かし始めた。
この音を聞いた家の人、、こんな夜中に庭の踏み臼がひとりでに動き出すとは、きっと道教の神さまのお助けに違いないと、さっそく多くの穀物を運んできて踏み臼につかせた。おかげで痩せた幽霊は今夜もくたくた。
もう我慢ならんと、翌日の夜に太った幽霊さがしにいき、大声で文句言った。
これには太った幽霊、痩せた幽霊をなだめながらしばらく考えてからいう。
「わかった。お前さんが行った家はどちらも、幽霊を信じない人たちだよ。だから、今度は幽霊がいるのを信じそうな家へいきな。きっとうまくいくわい」
これには痩せた幽霊、首を傾げたが、「今夜うまくいかなきゃ。お前さんを食ってやる」と悪態ついたあと、今度は遠くの、女子供が多いという家へ入った。それは未だ夕餉のときで、その家では女たちが晩飯を食べていた。これを見た痩せた幽霊、よだれをたらしながら周りを見ると、一匹の犬がいたので、何かおかしな気配を感じて吠え出した犬を頭の上まで持ち上げ歩き出した。これをみた女子たちは驚き慌て、ガタガタ震えだし、そのうちの一人が近くに住んでいる巫女は呼んできた。
そこで巫女は、しばらく考えてからいう。
「これはどこからか来た幽霊が、あんたがたの家に食い物もらいに来たのですぞ。ですからその犬を殺して丸焼きにし、また多くの食べられる供え物を庭において部屋に隠れなさい。そうすればその幽霊はこれからはあんたがたの家にはこなくなるでしょう」
これを聞いたその家の女子たち、さっそくそのとうりにした。こうして痩せた幽霊は、この日久しぶりに食い物にありつけ、それもたらふく食べて、余ったものまで持ち帰ったという。
このときから、死んだばかりで幽霊になったものは、いつも人の家で悪さをするようになったわい。それもあの太った幽霊に学んだおかげだって!!
さあね!
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