この時間は、清の時代の怪異小説集「子不語」、これは「子は語らず」という意味でしょうか。この「「子不語」」から三つの小話をご紹介します。
はじめは、「息吹く髑髏」です。
「息吹く髑髏」
時は清の雍正年間。杭州に閔(びん)茂嘉という人がいて碁を打つのが三度の飯よりも好きだという。閔さんは孫という苗字の先生がおり、いつも尋ねてきては碁石を打っておった。その年の五月はとても暑く、閔さんは家の庭に大きな風通しのよい東屋を作り、その下に五人の友人を呼び、冷えたお茶などを飲みながら碁を楽しん でいた。
と、孫先生が一局終わったところで、急にあくびした。
「ウ~ん。なんか急に眠くなってきたぞ。うん。わしは東の離れで一眠りしてくる。それからまた一勝負じゃ!それまで待っていてくれや」
孫先生はこういうとここは自分の家だといわんばかりに一人で離れに行った。
しばらくして東の離れの部屋から悲鳴が聞こえた。
「なんだ?なんだ?あれは孫先生の声だぞ!いってみよう」
ということになり、閔さんと友人は急いで離れの部屋に向かった。すると、部屋では孫先生が仰向けに倒れ、口からよだれ流している。そこで閔さんが生姜汁を飲ませると、孫先生は気が付いた。
「先生!いったいどうしたんです?なにがあったんですか?!」
「うわ~!おったまげたよ!」
「なにに?」
「実はこの床の上に横になったんだが、しばらくして背中が寒くなりだしてな。そのうちに床全体が冷たく感じるようになった。そして体中が冷えだしたので、いつの間にか震えだし、なんだこれは!いったどうしたんだ?と思っていると床の下で何か音がした。そこで床の下を覗いてみると、なんと驚いたことに、目玉がある髑髏が床の下から歯だらけの口をあけてフーフーとわしに息を吹きかけておるのじゃ」
「ええ!?目玉のある髑髏」
「そうじゃ。目玉だけがぎょろぎょろ光って恐ろしかった。そしてわしは気を失ったのじゃ」
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