「なんだと?」
「頼む!顧さん、私の仇を打ってくれ」
「わ、わ、わたしは剣客でもないし、役人でもないぞ」
「だから、わたしが言ったこと役人に申し出てくれ。わたしの死体を調べてもらうんだ」
「わたしが?」
「そうだ」
「で、では死体はどこにある?」
「ここにある。近寄るな。わたしは明かりをみるとしゃべれなくなるから」
「そ、そうか」
「頼む!顧さん。このお返しはきっとするからな」
「お返しなんかいい」
顧さんがこう答えたが相手の返事はなかった。
そこへ、どたばたと人の足音が聞こえてきた。みるとこの寺の和尚さんたちだった。
「あ!これは旅の人。ここへ変なものが来ませんでしたか?実は仏さまを前に念仏しておりますと、仏さまが急に消えましてな」
「そうですか」
「で、ここに来てはいないかと戻ってまいったもの」
これを聞いた顧さん「和尚さま。実は・・」といまさっきのことをありのままに話した。
話を聞いた和尚さん、うなったあとで、死体が倒れているという場所に明かりを持っていくと、確かに死んだ李家の主がそこで鼻や口から血を出して死んでいた。
こうして翌日、顧さんは死んだ李家の主に頼まれたとおり、ことの仔細を申し出たので、役人たちはさっそく死体を細かく調べた。おかげで人殺しの下手人たちはみんな捕まり、処刑された。
さて、ことが終わってまた旅を続けた顧さんだが、その後は何のこともなく無事に行くところに着いた。それからというもの、顧さんは運がよく、何をやってもうまくいき、財産は増えるばかりだったという。
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