今日のこの時間は、変わった昔のお話を二つ後紹介したしましょう。
まず最初は、「通幽禄」という本からです。
「呼び戻った叔父」
時は唐の大暦(たいれき)四年、仕官前の盧仲海とその父方の叔父が旅に出て呉という地方のある屋敷に立ち寄った。その夜、屋敷の主のもてなしで盧仲海と叔父はかなり飲み、叔父の方はとうとう酔っ払ってしまった。仕方がないので盧仲海はぐてんぐてんになった叔父を助け、屋敷の主が泊まっていけと勧めるのを断り、叔父を連れて屋敷を離れた。こうして町のはずれにある小さな宿に何とか連れて行き、そこに泊まることにした。この宿には一人のばあさんがいるだけ。そして部屋に入ると叔父はなんと吐いてしまい、そのうちに眠い眠いと言い出した。盧仲海は人を呼ぼうと思ったが、宿の主のばあさんはかなりの歳だったので、自分で叔父を介護することにした。そこで今度の旅に出る前に用意していた薬を叔父に飲ませたが何の効き目もない。そのうちに叔父は息をしなくなったので大慌て。ところが叔父はまだ死んではいないと悟った盧仲海は、不意に昔の本「礼書」に人をあの世から呼び戻す方法として相手を何度も何度も大声で呼ぶとかいてあったのを思い出した。そこで叔父の名を大声で何度も何度も、自分の声が枯れるまで呼び続けた。
こうしてかなりのときが過ぎた。しかし、叔父はまだ息を吹き返さない。
これはもうだめかなと盧仲海が諦めかけて涙をこぼしていると、なんと叔父は急に咳きをしだしたので、盧仲海が急いで水を飲ませると息を吹き返して目を開けた。
「叔父上!叔父上!気がついたようですね!ああ、よかった!よかった!」
「おお!仲海か!お前が一生懸命になってわしを呼んでいることはわかっておったぞ」
「ええ!そうなんですか?」
「うん!わしの耳の奥でお前の呼ぶ声が何度も何度もきこえたからな」
「いったいどういうことなんです?さあ、そこに座って話してください」
「うん」
ということになり、叔父は話しはじめた。
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