「知らなきゃいいんだ!おい!仲間たち、どうしよう?ここには逃げて来ていないみたいだぜ!」
「仕方がねえ!ほかのところを探してみよう」
こうして怖い顔をした男たちは、どこかへいてしまった。しかし、張華は油断しなかった。やがてお日さまが西の空から落ちるのを待ってから、怪我した鶴を大事に家に抱きかえった。そして張華はその日からしっかりと鶴の面倒を見たので、一ヵ月後に鶴の怪我はよくなり、元気を取り戻した。そこで張華は鶴を放そうと思っていたが、どこからことが知れたのか、、地元の金持ちである李仁義が張華が鶴を飼っていると聞き、その日はかつて張華が会ったことのある数人の手下を連れて張華の家にやってきた。
「こら!張華!お前はわしの手下が射止めた鶴を隠していたそうだな!このもの知らずめが!今日はわしの鶴を取り戻しに来たぞ!早くわしの鶴を返せ!」
こう言って、張華がこれ答えないうちに、手下たちが家の中に入り込み、ものをひっくり返してかの鶴を見つけ出すと鶴をかごに入れた。これを見た張華は必死になって止めようとしたが、なんと手下の一人に殴り倒されてしまった。
そして李仁義はいう。
「はははは!これでわしも長生きできるワイ。鶴の肉を食えば長寿できるというからな。これはめでたいわい!ひひひひ!」
これを聞いた張華、なんというやつだ!仙界の鳥である鶴を食べるとは!何とかしてみせるとそのときは思った。もちろん、一ヶ月も一緒にいて、毎日面倒を見ていれば、鶴とも感情が生まれてくる。だから、鶴を食うと聞いて張華は黙っていられないはず。そこで翌日の夜半、張華は李仁義の屋敷に忍び込び、鶴を入れた籠を見つけると、「早くお逃げ」といって鶴を放してやった。こちら鶴、命の恩人に何度か首を縦に振ってお礼すると、空へ飛び立った。
次の日、籠から鶴が逃げ出したのを見つけた李仁義は怒り出し、「なんということだ!鶴の肉が食えるところだったのに。ふん!きっとあの張華という若造が逃がしたに違いない。ものども、あの張華という奴を懲らしめて来い!」と手下に命じた。
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