「ジャスミンの花」というと、どんなイメージが浮かんでくるでしょうか。まずジャスミンティーのことを連想するでしょうか。
ジャスミンの花は、私にとって、「故郷」の花です。子供のころの思い出です。
私の故郷は、上海の南にある浙江省麗水市遂昌県水閣村。八歳まで祖父、祖母と一緒に村で暮らしていました。
小学校二年生の時、町の小学校に転校しましたが、家は祖母の家まで歩いて30分かかるぐらいの距離で、休みの日は、よく祖母の家に行きました。
遂昌県はお茶の産地です。祖母の家でもお茶の木、数本を持っています。大きいお茶の木です。茶葉がたくさん採れます。おばあちゃんは、よく私たち三人姉妹を連れて、茶葉を摘みに行きました。三人はいつも競争をしていました。その結果は、いつも二番目の姉が一番、私は二番、一番上の姉はビリでした。
私が中学校にいったころ、つまり20世紀80年代半ば前後、故郷では、ジャスミンティー作りがはやり始め、祖父は、真っ先に村でジャスミンの花を栽培し始めました。
中学時代の数年間、夏休みの楽しみは、ジャスミンの花摘みでした。もっとも暑い時期、そして、一日のもっとも暑い時間帯に、畑に向かいます。まず、祖父は、近くの川から水を汲んできて、盆栽と畑に植えてあるジャスミンの木に水をやります。三時ごろ、花摘みをはじめます。白くなったつぼみを摘むのです。一方の手は木をかき回し、一方の手はつぼみを摘んで、腰にぶら下げている竹籠に入れます。竹笠をかぶっていますが、日差しが強くて、汗が頭と顔から首をつたって流れてきます。時折、心地よいそよ風が吹いてきて、無上の幸せを感じます。
多い時には1.5キロのジャスミンの花のつぼみを摘むことができます。4時ごろ、近くのお茶の工場に花を売りに行きます。いつも竹籠に5、6粒のつぼみを残して、帰途につきます。残したつぼみは私たちの「とっておき」です。
日がだんだん暮れてきます。ジャスミンの花が咲き始めると、さっぱりとしたいい香りが私を包みます。夕もやのなか、牛を引っ張って家へ帰る村人の後姿を眺めます。故郷は、「桃源の郷」だと私はずっと信じ込んでいました。
故郷、わが懐かしい故郷・・。
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