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祝祭日とお酒(一)
   2006-04-05 16:07:22    cri

 祝いことにお酒がつき物、これはどこの国でも同じですが、中国の伝統では祝日の違いで飲む酒も違い、それぞれに言い方がありました。

 しかし、残念なことに今ではほとんどなくなり、その面影を残すものとして一部残っているだけです。それにしても、昔も今もそうですが、毎年の一月は酒の好きなものにとっては格好の良い口実がたくさんある月です。晦日、元旦、人日(じんじつ)、上元などといった祝日はいくら恐妻家であろうと、お酒をおおっぴらに安心して飲める時です。

 勿論、昔の人の言う元旦も晦日も新暦とは違い、古人は陰暦を使い、冬至から二ヶ月過ぎた孟春月を一年の始まりの月、正月といい、松のうちの最後の正月七日を人日といい、正月の十五日を上元の日、正月の最後の日を晦日と言っていました。現代人の感覚とちょっと違うようです。

 元旦は元日、端日ともいい、上は天子から下は一般庶民まで、酒を以てこの日を盛大に祝います。

 『五経』の一つで、漢の戴徳が編した『礼記』に、「天子元日に穀物を供物として上帝を祭り、自ら鋤を手に、田に足を入れ耕す。これを籍田、耕籍のあと、酒を以て慰労会を開く」とあります。

 耕籍の制度は周王朝に始まるといいますから、数千年も前のことです。農業が経済の大黒柱となっていた当時にしてみれば、天子でさえも、一応畑仕事を格好だけでもやり、その慰労という名義で酒を飲んだのです。その時の酒宴も畑の傍で行い、朝廷のすべてのお役人も全部揃ったに違いありません。ここで飲むお酒は格好だけで、宮廷での朝賀が本式の宴で、この時に出される酒こそ全国からかき集めた名酒で、これを更に吉祥になぞらえて作り変えて飲みます。

 漢の時代には「正旦、柏莱酒を以て新しい年を祝う」とあり、晋の時代には皇帝が各大臣に『禄酒』、官員の受ける給与の禄、禄酒なるものを授け、新しい年に禄があがるよう祈ったということです。

 元旦の朝賀の席での飲酒を政治に結びつけた帝王もいます。

 『宋史』の記載によると、宋朝の皇帝は、白獣樽を殿上に置き、朝廷の国事や皇帝に直言し、皇帝を諫めるし、臣下には褒美として白獣樽を使って酒を飲むことを許したとあります。自分を諫めるものを奨励するという皇帝、賢明な皇帝であったに違いありません。

 また、『北斉書』によりますと、北斉の皇帝は朝賀が終わると、皇帝が臣下に一枚ずつ白紙を渡し、何でもいいから、何か一つのことを陳述してかかせたそうです。ただ一つ、字の汚いものには罰として、墨を一昇飲ませたということですから、ちょっとひどいことですね。でもそれを心得ている臣下は普段は書道がとても盛んであったとも言われます。

 それもそうですね。元旦もめちゃくちゃになってしまいますからね。

 さて、一般の庶民の間でも条件さえあれば、酒を飲んで元旦を祝いますが、飲む酒にも吉祥、安寧、長寿などという縁起を担いだお酒を飲みます。例えば、お屠蘇とか山椒の花を浸けた酒がそれです。

 『屠蘇』というのは元は尼寺の名で、その昔、神秘的な人物が屠蘇という尼寺に住み、毎年の除夜に、ひと包みの薬を近所の人に分け与え、これを井戸水に溶かし、元旦の日、薬を溶かした井戸水でお酒を薄め、それを一家で飲むと、この一年急性伝染病から逃れられるとのことです。この村の人々はこの薬を入れたお酒を飲み、伝染病が周囲の村々で大流行した時も、この村の人々は誰一人感染することなく、無事だったということです。元旦に飲んだ薬の入ったお酒の御利益だという噂がまたたまに広がり、この酒を尼寺の名『屠蘇』を以て命名したということです。

 お屠蘇は肉桂、山椒など七種類の薬草を入れたお酒で、アルコール度がとても低いので、老若男女誰もが飲めるように出来ています。

 元旦にこれを飲む時がまたちょっと変わっていて、尊重すべき、一家の最年長者が一番最後に飲むことになっています。『荊楚歳時記』の元旦、お屠蘇について綴ったところで、「屠蘇酒は幼い者から年の順で飲む」とあり、『時鏡新書』という古書にも「元日の屠蘇酒、最年少者から飲みは忌める」とあります。この慣わしは後漢の頃、今から1800年ほど前から相当の範囲で普及していたと言われます。

 では、なぜ年長者を前に置いて年少者から先に飲み、年長者をあとに回すのか、昔の人も腑に落ちなかったそうです。これこそ道徳倫理に外れるものといって、かんかんになった学者もいましたが、道理を聞くと「うーん」と頷き、「なるほど」と誰もが納得したようです。「少者歳を得る故に祝すべし、年長者歳を失う故に、罰すべし」というのです。年長者にとって、新しい年を迎えるたびに歳をとり、ますます老いていくので、うれしい気持ちになれるはずがないわけですね。

 宋代の詩人、蘇軾の作に、「除夜に、常州城外に野宿す」という詩がありますが、その中に「最後に屠蘇飲むことを辞さず」という一句があります。ここから見て、宋代の頃にも、お屠蘇が飲まれていたことは確かのようです。

 元旦を飲むお酒に、お屠蘇のほか、山椒の花の酒、椒花酒とか、椒酒という酒で、山椒の花を浸けて作るお酒があります。

 この椒花酒は本来戦国時代に神を祭り、先祖を祭る時に供物として使われたお酒で、後漢の頃から新年を祝う時にも飲むお酒となり、『四民月令』という古書に、「元旦の日、先祖を祭った後、子孫は椒花酒を以って親たちに捧げ祝す」とありますが、遅くとも今から1800年ほど前の後漢の頃には神や先祖を祭ることから、親に対する尊敬を示すのに使われるものへと変わっていたことが分かります。

 この椒花酒は下の者が上の者に捧げるお酒ですから、お屠蘇のように年少者から年長者の順に飲むというものではありません。この椒花酒が日本にも伝えられたかどうかは私の手元の資料だけでは判断しかねますが、屠蘇酒は間違いなく日本にも伝わりました。中国ではほとんど見られなくなったお屠蘇が日本では今も割と多くの家庭で形ながらも残っていると聞きます。

 資料によりますと、元日にお屠蘇や山椒花酒を飲む風習はラスとエンペラーで知られる清朝まで続いたようですが、今の若い人に屠蘇酒と聞いても、これがお酒であることさえも知らず、元日に飲む風習については尚更のこと知る者はほとんどいません。

 さて、元日に飲むお酒が屠蘇酒であれば、立春の日に飲むお酒はミカンを醸して造った果実酒で、『東京夢華録』ではこれを『洞庭春色』と呼んでいます。天下一洞庭湖の春景色にたとえ、春を待ち望む気持ちをミカンを醸して造った果実酒に寄せたのでしょう。

 そして、正月の七日、松の内の最終日、人日には昔の人は上等なお酒を選んで飲んだということですが、当時の上等な酒は透明な醸造酒で、これを清酒(せいしゅ)といい、質の落ちるものを濁酒(だくしゅ)を嫌って清酒を飲んだということです。

 でも、唐代の詩人で、白居易と並んで当時大きな影響を及ぼした韓愈は人日に書いた『城南の高きに登る詩』の中で、「樽(たる)の酒(さけ)、清濁(せいだく)共(とも)にあり」と詠っています。

 酒のみにとっては、清酒であれ、濁酒であれ、どっちでもよいのだといって韓愈は人日でも濁酒を拒否しなかったと言われます。

 そして、正月の十五日、上元の日、今では『元宵節』と言っていますが、この日もお酒は欠かせない日で、それもとても普遍的であったようです。

 宋代の宣和年間、今から7、8百年ほど前『程史』という著書にこんな話が載っています。

 「ある年の上元の夜、一組の若夫婦が連れ立って提灯祭りに出かけたが、人込みの中で別れ別れになってしまう。夫人は疲れて端門まで来て、そこでもらい酒を飲んだ」とあります。

 つまり、これはかの男尊女卑という女性が厳しく束縛されていた年代に、女性がそれも外で酒を飲むというのはどう見ても許されないはずです。上元の日だけはこれが許されたことを物語るものです。それだけ、上元の日のお酒は普遍的であったと言えましょう。

 また、お正月の最後の日を晦日といい、「貧しきを送る日」とも言われています。これにはこんな伝説があります。

 古代伝説上の帝王、黄帝の孫、顓頊高陽が国事をとっていた頃のことです。

 、窮子(きゅうこ)が正月の晦日に亡くなり、宮中で、窮子を送る葬儀が行われました。「窮を送る」、つまり、貧しさを送るということで、町では、お酒を地に垂らして、窮、つまり,貧しさを送り、富の到来を祈ります。これが『瀝酒』ーー酒を垂らすという風習となり、正月晦日の大事な行事になってしまいました。

 唐代の姚合という詩人も『晦日(みそか)に窮(きゅう)を送(おく)る三首』の中で、年年(ねんねん)この日至(いた)れば、瀝酒(れきしゅ)して街中(がいちゅう)にて拝(おが)む万戸千門(まんこせんもん)見(み)たれば、窮(きゅう)、送(おく)らぬ人なし。と詠っています。ですから、正月の最後の日も、お酒と切り離すことができないのです。

 昔は一年四季のうち、正月がお酒を飲む機会が多かったようです。これだけは今もあまり変わっていません。逆に、更に豊かになっています。西洋の真似をしてクリスマスイブに飲み、日本流に習って忘年会で飲み、新年を祝って飲み、元宵節に飲み、酒の好きな人にとっては誠に喜ばしいことではないでしょうか。

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