ヤウミン選手の足のケガは、80％ぐらい回復していると本人が言っていますが、チームと一緒にトレーニングする時間はわずかしかありませんでした。皆さんご存知のように、バスケットは、サッカーやバレーと同じように、スター選手の力はもちろん重要ですが、それより、もっと大切なのは、チームワークです。ヤウミン選手は、今大会での出場を決めていますが、チームメンバーとどこまで一体となって戦えるかが注目されています。

　今回の世界選手権はヤウミン選手にとって、大きな舞台であるとともに、試練の場でもある訳ですね。アメリカで長くプレーしていたからといって、中国に戻ってすぐに力を発揮できるとは限りません。考え方や、トレーニング方法、戦術などで、中国とバスケ強豪のアメリカとの間に、まだまだ差があります。ヤウミン選手の今回の帰国によって、より多くの先進的なやり方が伝えられればと期待されています。

　今回の世界選手権は、二年先の2008年オリンピックを前にしてのいわば前哨戦です。中国代表を率いて、これからチームをどれだけ強くできるかが、ヤウミン選手の課題でしょう。2008年の目標について、ヤウミン選手はつぎのように語っていました。

　「2008年オリンピックの目標は相変わらず、ベスト8進出です。もちろん、もっと良い成績を取れればうれしいですが。しかし、これを実現させるには大変な努力が必要です。また、これからの二年、何が起きるかわかりません。僕が受けるプレッシャーは大きくて、やりにくいですが、前回のアテネオリンピックでもベスト8進出を果たしました。北京オリンピックまであのようなファイティングスピリットを保つのが一番大事だと思います。」

　現在、NBAで活躍しているアジアの選手がまだ少ない中で、ヤウミン選手は、アジアのバスケットについて、自分の考え方を持っています。彼は、一方で、アジア人が身長や体重などの面で確かに劣っていることを認めているんですが、アジアのチームと世界の強豪チームとの差は、身体の面にあるのではなく、精神面にあると強調しています。

　「問題があるのは自信が足りない点です。私はそう思います。強い自信を持って試合に臨めば、ヨーロッパの強豪と対戦しても、10ポイントの差しか譲らない実力があります。われわれに最も欠けているのは、強い精神力です。10ポイントぐらいリードされたらあきらめてしまう、これは解決しなければならない大きな問題です。」

　自信と精神力とは、まさにNBAの経験から出た言葉なのでしょう。ヤウミン選手は、勤勉で、自覚的、そして意志の強いプロ選手になっています。彼にとって、トレーニングは人生の中で最も楽しいことだといいます。

　「私にとって、毎日最も楽しいひとときは、激しいトレーニングを終わって、ベンチに戻った時です。汗をいっぱい流した後はなんともいえない良い気分です。」

　でも、ヨウミン選手としては、トレーニングの後のいい気分に満足するだけでは済まないでしょう。彼には、あまりにも多くの期待が寄せられているわけですから。まあ、そのことを身にしみて感じながらも、できるだけ自然な態度で自分のバスケット人生を歩んでいるということでしょう。（文章：王丹丹　08/21）