先月16日、北京オリンピック開幕式の演出グループが正式に発表しました。開幕式と閉幕式の総監督を務めるのは、日本でもお馴染みの映画監督、チャン・イモーさんです。
実は、2004年、アテネオリンピックの閉幕式で8分間、中国に関する映像が上映されましたが、それが、チャン・イモー監督の作品です。一人の女の子が「綺麗なジャスミンの花」という中国の有名な民謡を、無邪気なかわいらしい声で歌う…そんな印象的な映像でした。
今回オリンピック開幕式の総監督に選ばれたのは、映画界での貢献が認められただけでなく、映画作品の中で、中国的部分をうまく取り入れ、また、それを外国の方が見て、よく分かってくれるような表現することには長けているという点が評価されたようです。
16日に行われた記者会見で、チャン・イモー監督は、次のように話しました。 「オリンピックの開幕式と閉幕式の総監督に選ばれたことは私にとって、この上にない光栄です。これを引き受けた今、私は、これまでにないプレッシャを感じており、そのために私の全ての精力と知恵を搾り出さなければならないと分かっています。現在手元にある仕事をできるだけ早く終わらせ、これから全ての力を北京オリンピックの開幕式と閉幕式の演出に注ぎ込みたいと思います。」
このチャン・イモー監督に加えて、「芸術顧問」という肩書きで、アメリカのこれまた名監督の一人、スティーブン・スピールバーガ監督が名が連なっています。
スティーブン・スピールバーガ氏の起用について、チャン・イーモー監督の「中国的な要素」に「世界的な視点」を加えるためであるとされています。この2人の名監督のほか、中国国家歌舞団のチーフプロデューサ陳維亜氏や、中国人民解放軍歌舞団の張継剛団長、東方学の第一人者である季羡林氏、美術家の靳尚誼、演劇家の徐暁鐘など、中国の一流の文化芸術学者がメンバーに入っています。
いわば、中国の演出における最高の専門家の力を全て結集して作る…というわけです。2008年の開幕式が一体どんなものになるのか、おそらく全世界30億人が見ると言われる開幕式が本当に楽しみです。開幕式の企画については、開催日当日までトップシークレット。それだけに期待が高まるというものです。
ところで、今回のオリンピック大会は、北京のほか、上海など六つの都市で競技が開かれることになっています。上海は、今回オリンピック大会の一部のサッカー競技が行われます。2008年8月6日から15日まで、サッカーの予選9試合が上海で行われます。
上海市体育局のキュー・偉昌副局長は、抱負を語りました。「2008年オリンピック大会の一部のサッカー競技が上海で行われることを非常に光栄に思います。予選の試合ですが、一流レベルの試合にしたいと思っています。」
この目標を実現するため、上海市はまず、最も難しいソフトの面から行動し始めています。試合や、競技場関係者に対する養成を定期的に行うほか、市民、特にサッカーファンの中では、スポーツ観戦のマナーを普及する講座や、キャンペーンなどもたくさん開かれています。
施設などハードの面は、お金さえあればできるものですが、観戦マナー、ルールを守る習慣など人々の心に関わる部分は、浸透するまでまだまだ時間がかかると見られています。これは、上海だけではなく、中国のあらゆるところでオリンピックまでもっとも改善しなければならない問題の一つです。
ただハード面では、上海はある程度条件が揃っています。2000年までに、上海は、およそ320の国内サッカー試合を主催したほか、国際試合も70回以上行いました。サッカー競技の運営面では一定の経験を積んでいました。
特にここ二年間、上海はF1の中国グランプリや、テニスのマスターズカップ、陸上の上海グランプリなど国際的試合を数多く開かれています。また来年には、女子サッカーのワールドカップも上海で行うことになっています。これを通して、上海はオリンピック開催に向け、また一歩前進するに違いはありません。
2008年オリンピック上海会場のスタジアムに指定されたのは、上海体育場です。これは、1997年に行われた、日本の国体にあたる第8回全国スポーツ大会のために建設したもので、上海で最も大きな総合的なスポーツ施設です。8万人収容の大型スタジアムですが、今回オリンピックのサッカー競技に向け、さらなる設備の増築が予定されています。
上海体育場の責任者である胡神奇さんは次のように改築する内容を紹介しました。「今回、充実させなければならないのは、例えば、通信施設ですね。オリンピック中継の要求を満たさなければならないし、観客の皆さんに情報を提供するためのニーズにも答えなければならない。それから、プレスセンターですね。マルチメディアを設置した端末を増やすほか、プレスセンターの液晶スクリーンも大型のものに変える。また、照明設備の強化や、芝生の手入れなども今後は予定しています。」
そして、交通の問題も上海市の主催機関を困らせています。この上海体育場は市の中心部にあり、平日は交通渋滞で大変です。オリンピックが始まると、麻痺しかねない状態が考えられます。ですから、選手や関係者を空港から競技場にどうやってすばやく送るか・・運営側がもっとも悩む問題の一つです。
この問題を解決するため、上海市はすでにオリンピック競技期間中の暫定交通規制案を制定しました。これによると試合期間中、スタジアム周辺では、臨時の交通規制が実施されるほか、政府は、できるだけバスや地下鉄など公共交通手段を利用して出かけるよう市民に呼びかけることになります。
2008北京オリンピックまで、後二年ちょっとです。まだまだ準備が出来ていないようですが、北京オリンピック組織委員会の蒋効愚副主席は次のように話しました。「スタジアムなどハード面については、いくら難しくても、二年間あまりの時間で完成することができる自信があります。しかし、この短い二年間ちょっとの間で、国民の素質、つまりマナーや社会道徳を向上させることができることができるかどうかは、正直に言って、大きな困難があります。ハード面の整備よりもっと力を入れなければならないと思いますが、できるだけのことをやり尽くすつもりです。」
国際的イベントが成功するかどうかは、最終的にはその国の国民のホスピタリティ、受け入れ、もてなす気持ちにかかってるといわれます。すばらしいオリンピック大会の実現を目指して、北京や、上海、中国全土は自らの形で動いています。(文章:王丹丹)
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