北京市郊外にある韓園子村。ここに犬の養殖センターがある。敷地面積1000平方メートルほど。そこでは現在、中国でほとんど見られないチベット猟犬128匹が養殖されている。そして、そこのオーナーの名前は馬俊仁。かつて「馬軍団」を率い、世界の陸上界を席巻し、世界陸上、オリンピックの中長距離種目を総なめにした指導者である。日本では、「馬軍団」の選手たちが使っているという漢方薬が大いに話題になった。
「チベット猟犬」とはただの犬ではなく、古くからチベット高原に生息し、体がロバほど大きくて、虎のように走り、ライオンのように吠える・・非常に忠実で勇敢な性格を持ち、中国を代表する国の犬、「国犬」とも言われている犬である。
では、かつての名コーチがなぜ、そのチベット猟犬の養殖センターを始めたのか。
実は、馬さんのもう一つの顔は「猟犬マニア」。チベット猟犬が生息するチベットでは、実は馬さんは陸上の一流指導者ではなく、「大のチベット猟犬好き」の男性として有名なのだとか。
でも馬さんはただの犬マニアというだけではない。今、チベット猟犬は様々な理由から、生息数が減ってきており、このままでは絶滅の危機にあり、彼らを保護したいというのが馬さんの大きな目的の一つだ。馬さんはすでに1986年からチベット猟犬の養殖を始めていたが、引退後の2003年から人生の全てをこの養殖センターにかけるようになった。
馬さんは、「チベット猟犬はチベット高原に生息していたもので、そこの牧畜民は季節の転換に従って住む場所を変えています。その離れた家と家畜を守ってくれるのはチベット猟犬です。チベット猟犬の最も大きな特徴はその忠誠心で、絶対に主人を裏切ることはしません。そんな忠実さに私は惚れ込んだというわけです。」と養殖への思いを語る。
現在、このチベット猟犬は世界で30万匹生息しているが、純血のものはわずか300匹ほど。チベット猟犬を保護し、その数を増やすため、過去20年間、馬コーチはチベット高原のほとんどのところを回ってきたとか。
今、チベット猟犬は放牧に用いるだけでなく、社会のいろんな方面で活躍しています。それについて、馬さんはこう説明しました。
「チベット猟犬は一般の家庭や工場などの番犬にも広く使われています。西洋諸国では、特に別荘などで、高い給料で24時間の警備を雇うより、チベット猟犬一匹置いたほうがいい、なんて言われるそうですよ。」
馬コーチはさらに、チベット猟犬についてのこんな実話も語ってくれた。ある日、陳さんという人が外に出かけ、奥さん一人が留守番していたところ、数人の泥棒がやってきた。その時、陳さんが飼っている幼いチベット猟犬が命をかけて泥棒たちと戦った。数十分後、泥棒たちは逃げ出しましたが、勇敢な子犬たちも血だらけだった・・という。
現在、馬さんの養殖センターには、優れた血統のチベット猟犬が128匹、集められている。馬さんはいつも「今、中国で最も優れたチベット猟犬はほとんど私のところにあるよ」と自慢しているそうだ。
ちなみにそのお値段ですが、2003年に購入したオス一頭を手に入れるのに18万元、つまり230万円以上しました。
かつては中長距離界の王者、「馬軍団」を率いて世界を驚かせた中国一のコーチ。その馬さんが今は、犬の養殖で中国一になっている・・というのも面白い。(王丹丹)
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