「中日交流カフェ」では月に1回、「日本語大好き」というコーナーをお送りしています。日本語を勉強している中国の大学生をゲストに招きお話を聞くというコーナーです。実は大学生の皆さんと話をしていると、ある日本人の名前が必ず出てきます。北京在住の日本語教師・駒澤千鶴さんです。駒澤さんの日本語教師歴は実に11年。北京の日本語学習者の間では、ちょっとした有名人です。いったいどんな方なのでしょうか?先日、駒澤さんにお話を伺いました。
Q:どんなきっかけで、中国で日本語を教えることになったのですか?
A:日本語教師という仕事を本格的に始めたのは、中国に来てからのことです。大学を卒業して、最初は広告会社に務めました。そこで、製作の仕事をしていました。後ほど、フリーライターをしていました。実は母親が教員で、私もずっと教師になりたいと思っていました。社会科の教員を目指していましたが、競争力が高くてこの夢は実現しませんでした。でも、あるとき、ある学校の広報を担当したとき、そこで日本語教育の現場を目にしました。私もやってみたいと思って、すぐ教員免許を取りました。その後海外で働くチャンスを探していたのですが、あるとき中国を旅行する機会があり、中国語ができなくて、言葉が思うように通じないくやしさを味わいました。それがきっかけで、中国に来ようと思ったのです。
Q:11年前から中国に滞在されていますが、この間ずっと、日本人教師をなさっているのですか?
A:1996年から2000年まで、天津で4年間教えました。2002年からは清華大学や北京外国語大学、そして、現在は外交学院で日本語を教えています。その間2年間ほど、JICA・国際協力機構の派遣で、中国の農村を取材する仕事もしていました。
Q:どんな科目を教えたことがありますか。
A:これまでに一番多く担当したのは精読です。その次に多いのは会話で、その次は日本語のLL講義です。そのほかに作文や総合日本語を担当しました。
Q:駒澤さんの教え子の方から、「うちの駒澤先生はすごい人なんですよ!鉄人なんですよ!講義の準備をするため、毎日4時間しか寝ていないんです」と聞きました。それは本当ですか?
A:編集の仕事をやっていたので、徹夜するのは慣れています。でも、ぜんぜん寝ないということではありません。週末になると、12時間寝ることもありますから。
Q:どんな理由で、睡眠時間がそんなに短いのですか?
A:近頃は、POWERPOINTの文書を製作しています。これを使うと、授業の効率が向上しますから、どうしても凝って作ってしまって、時間がかかります。あと、プリントに絵を入れたりするので、手間がかかります。
Q:また、これも教え子の方から聞いたことなんですが、駒澤さんは中国人の先生と違って、時々学生を食事に誘ってご馳走するそうですね。これは、日本人教師ならではのやり方ですか。
A:これは、個人差があります。実は、私の場合、それほどのご馳走というわけではありません。カレーライスを作ってあげる程度です。つい先週も、60人分のカレーライスを作りました。また、暖かい時には、みんなで一緒にガーデンパーティーをやったこともあります。そんなことを通して、食事のマナーとか感謝の気持ちを教えたいです。実際に食べさせないと、学生にはこうした実感が湧かないでしょう。
Q:中国で11年間、さまざまな中国の学生と接触されたと思います。駒澤さんにとって、中国の学生の好きな点、逆に、「これは改善したほうがいい」という点はありますか?
A:中国の学生は、とてもまじめです。私の教えた学生も、みんなとても教え甲斐がありました。ただ、もっと日本語の学習を楽しんでいただきたいと思います。日本語を使って、自分のやりたいことを実現する・・・という思いで勉強したほうがいいではないかと。私が一番気になるのは、スピーチと作文です。皆、判で押したように同じものが出てきます。自分の心から出てくる、自分にしか書けないことを書いてほしい。話したいことを話してほしい。それが私の一番の願いです。だから私は、お題として、たとえば「あなたにとって一番悲しいことは何ですか?」というようなテーマを出します。自分を表現するために、日本語を使ってもらいたいからです。これが中国の学生に願うことです。
Q:駒澤さんのこれからの目標、夢はなんですか?これからも、中国で日本語を教え続けますか?
A:大きなことを言わせてもらうと、私の学生の中から、世界の平和を作り出すような人物が出てほしいです。もう一つは、片思いの相手を振り向かせたい。実は、その相手とは中国のことです。私はこれまでに18ヶ国を旅行したことがありますが、その中で、中国は一番憎たらしかった国です。すごく魅力的なのに、中国語ができないとぜんぜん輪の中に入っていけないようなところがあります。片思いの相手の中国で、中国の魅力を十分に味わって、こちらを振り向かせてみたいと思っています。
Q:最後になりますが、リスナーの皆様に、中国での生活の知恵、そして、北京に来たらぜひ行ってほしい、お勧めのところをご紹介ください。
A:中国に来たら、中国のことをまず受け入れてください。誤解があるかもしれませんが、まずは何も判断しないで、受け入れてもらいたいと思います。中国は中国の文化があります。必ずその裏には理由があります。
お勧めのところとしては、バスに乗ってください。バスに乗って、面白そうなスポットで降りて、見てまわってください。また同じ番号のバスに乗れば出発地に戻れますから。北京では、非常に安い交通ICカードを使えば、交通費がずいぶん安くなります。(文:任春生 写真:斉鵬)
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