このほど、日中産学官交流機構・中国教育国際交流協会・日本学術振興会などが主催した「日中人材開発・交流ワークショップ」が、北京で行われました。このワークショップは、中国と日本のあいだで人材交流が進んでいる今、どんな問題があるのか。、また、それを解決するにはどうしたらいいのか、両国の研究機関や民間団体などの代表者およそ200人が出席し、話し合いました。
今回のシンポジウムを開いた趣旨について、まずは主催者側のひとり、日中産学官交流機構の興直孝さん、「目的としては、日中間の緊密な人的ネットワークの形成が、両国の諸問題の解決に向けての基本であるとの認識の下に、両国の各層における人材交流の問題点の顕在化、およびあり方を議論することです」と語りました。
このワークショップはシリーズで行われて、今回は4回目となります。これまで会場は東京でしたが、今回ははじめて北京での開催ということで注目を集めました。このワークショップ、毎回違うテーマについて話し合っているそうですが、今回は、「日中イノベーション人材の開発と交流」というテーマでした。「イノベーション」とは、これまでの仕組みにとらわれず、まったく新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指します。「イノベーション人材」とは、その能力を持っている人材のことを言います。これからの世の中、新しいものを生み出し社会を変えていけるような人材が求められているということです。今回のワークショップに参加した北京師範大学学長・中国教育国際交流協会の鐘秉林副会長は次のように見解を述べました。
「イノベーション人材とは、革新的な精神・能力を持ち、それによって成果を収められる人材をさします。もちろん、時代によって、どんな人材が求められるかは異なるでしょうが、今日、私たちが言うイノベーション人材の条件とは、まず、広い知識、特に専門知識を身につけていること。第二に、革新的な能力を持っていること。第三に、革新的な精神を発揮できること。第四に、積極的な価値観をもっていること。第五に、国際的な視野、競争力を持っていること。そして、健康です。」
しかし、ひとことで「イノベーション人材を開発しよう」と言っても、簡単なことではありません。今回のワークショップでも、どのように人材開発を行えば効率的なのか、有識者たちがさまざまな意見を交換し合っていました。最終的には、やはり教育機関、特に大学がイノベーション人材の養成に取り組むことが重要だという共通認識に達しました。
20代の若い時期、特に、大学生の時期というのは、自分の価値観を決定し、人生の目標を定めるのに非常に重要な時期といえます。そこで、大学側も、学生をいかに育成していくか、方法を模索する必要がありますし、ほかの大学との連携も必要になってくるだろうということです。また、特に、日本と中国、両国間で国際的に活躍できるイノベーション人材を育てるためには、海外留学の重要性もあげられていました。ここ最近は、日本へ留学する中国人、中国へ留学する日本人がますます増えていますが、国費留学のチャンスを増やすなど、国家などが留学をサポートする必要もあります。これについて、ワークショップに参加した中国国家留学基金管理委員会の楊新育事務次長は、「国費留学は、人材養成、特にハイレベルな人材養成にとって重要です。中国では、教師や研究家などを中心に留学経験のある人材が増えています。わたしたちも、1996年から2006年までの10年間に、あわせて2万7000人の国費留学生を派遣しました。もちろん、日本への留学生も多いですよ。帰国した留学生は、いま、各分野で活躍しています。また、外国人留学生に対するサービスにも力を入れなければなりません。留学生に奨学金を出したり、留学手続きのサポートをしてあげたり、そうやって人材育成のお手伝いができればと思っています」と述べました。
人材問題は、日本国内だけで、または、中国国内だけで論じるのではなく、日本と中国がお互いに知恵を出し合い考えていけば、よりよい解決案が見つかります。そうしなければ、いまの時代は語れないかもしれません。人材育成に関する日本と中国両国のワークショップ、主催者側は今後も続けていきたいと話していました。
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