1973年6月24日、中国の周恩来元総理の仲立ちで、中国の天津市と日本の神戸市の友好都市提携が実現しました。以来、北京と東京、上海と大阪、重慶と広島、西安と奈良など、多くの都市間で提携が結ばれ、現在、中日両国のあいだで友好都市提携を結んでいる都市は２９９組もあります。こうした友好都市間ではさまざまな交流事業が行われていています。友好都市の存在は、両国の交流にとって非常に重要な役割を果たしていると言えます。その中でも、中国の石家庄市と日本の長野市はこのような友好交流を積極的に行っています。

　石家庄は北京から南西におよそ３００キロ。河北省の省都です。人口は８１８万人。昔は小さな農村でしたが、鉄道の開通により急速に発展。現在では、紡績・医療・電子工業などが盛んな工業都市に成長しています。特に紡績は、中国六大紡績基地の一つに数えられています。また、石家庄は工業都市である一方で、小麦や綿の栽培、リンゴ・梨などの果樹栽培も盛んです。地形や気候が似ていることや、産業の面でも共通項が多いことなどの理由で、石家庄と長野市は友好提携を結びました。

　両都市の友好提携は25年前、つまり、1981年4月19日にさかのぼることができます。先月、友好提携25周年記念イベントに参加するため石家庄市を訪問していた、長野市市長・鷲沢正一さんは次のように教えてくれました。「長野県と河北省は海に接していません。そういう意味でも、双方には共通項が結構あるんですね。お互いに共通項があるから、これからもお付き合いしていけると思います。現段階で、長野市と石家庄市では、いろんな交流をやってます。一番いい交流だなあと私が思ってるのは、中学生をお互いに派遣し交流するものです。お互いに刺激になります。特に、長野市の子供たちは、行く前に必ず私のところに来て、『これから行ってきます』って挨拶してくれます。それから、帰ってきたら必ず報告に来ますね。子どもたちは『中国の中学生は一生懸命勉強していて、日本はこのままいけば負けちゃうよ』とよく言っています。長野市の子供たちはすごく刺激を受けているみたいです」

　このほかにも、毎年、さまざまな形での市民訪問や文化交流などを行っています。草の根の交流を通して、市民同士の相互理解を促進しようと考えているのです。今年は特に、友好提携２５周年を記念した子ども絵画展も開催され、大盛況だったようです。徐々に成果も出てきているとのことで、「今後ともこうした市民交流に力を入れていきたい」とおっしゃっていました。

　また、訪問した感想については、「この前来た時(２年前)と比べて、ずいぶん変わりましたね。もともとずいぶん大きな市だなあと思っていたんですが、今回、本当に現代的になったなあ、ずいぶん変わったなあという印象を受けましたね。特に『開発区』というところは、ずいぶんすごいことをやってるんだなあと思いました。」と語ってくださいました。

鷲沢市長は、これまで何度か石家庄市を訪問されたことがあるそうですが、今回は約2年ぶりの訪問。近年めざましい発展を遂げる石家庄の変貌ぶりに驚いていらっしゃるようでした。

　なお、石家庄市の開発区ですが、１９９２年から建設がはじまり、現在、国内外の企業およそ１５００社が参入しています。日本企業もいくつか入っているそうです。長野の企業は、まだ石家庄には進出していないそうです。ただ、経済交流は、中日両国にとって非常に重要な交流手段の一つですから、これから検討していきたいとのことです。逆に、中国の企業を長野市に誘致することについても関心を寄せていらっしゃるようです。

　また、長野県は冬季オリンピックを行った経験があります。長野市の市長として、鷲沢さんは、再来年初めてオリンピックを行う北京に対して、次のようなメッセージを送りました。

「基本的には、長野県が行った冬季オリンピックと夏季オリンピックはかなり違います。実際に規模も違います。夏のオリンピックは大変ですよね。だから、われわれの経験が参考になるとは、実際思えません。しかし、一番大事なのは、来てくれる選手な らびにお客さんが本当に満足して帰ってくれるかどうかです。これがオリンピックが成功するかしないかの一番のポイントだと思います。長野は、この面では一生懸命やりました。多分、か なりの方々に満足していただけたと私は思っています。お客さんに対する国民の接し方、暖かい ハートを持って、『おいでください』『ようこそいらしゃいました』という気持ちをどう表現するか、そこが一番大事じゃないかと私は思っています」