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「黄砂」とは、中国・黄土高原の砂漠から、遠く離れた地域まで砂が飛来してくる現象のことです。北京にも、毎年ものすごい量の黄砂が飛んできます。今年の黄砂はとりわけひどかったと言われています。気温や雨量なども原因と考えられていますが、もうひとつ、近年深刻化している砂漠化の影響もあるようです。
砂漠化は、いま世界規模で問題になっていますが、中国も砂漠化の影響を受けている国のひとつです。各地で問題となっていますが、内陸部の山西省あたりが深刻なようです。
秦の始皇帝の時代、山西省一帯は、全面積のおよそ50%が森林だったそうです。ところが、唐の時代には40%になり、元の時代には30%になり、清の時代にはついに10%を切り、中華人民共和国成立時には2.4%しかなくなってしまいました。人口が増加するにともない、土地を開墾したり木材を伐採したりしたのが原因と見られています。

また、山西省は乾燥した地域ですから、もともと農業に適した土地ではありません。その分、農地面積をどんどん増やしていかなければならなかったので、砂漠化も速く進んだと見られています。山西省は、歴史が古く文化遺産もたくさん残っており、近年は工業地帯としても発展します。しかしその裏では、砂漠化という環境問題を抱えていたというわけです。
中国政府をはじめ、国内外の団体が、現在山西省の砂漠化を食い止めるため植林活動を展開しています。「日中友好砂漠緑化協会」という、日本の団体もそのひとつです。これは、滋賀県など関西の方々を中心に結成された団体で、元大蔵大臣・武村正義さんが会長を務めています。1999年の結成以来、中国での砂漠化対策に取り組んでおり、昨年からは山西省で砂漠に木を植える取り組みを始めています。
先月末、彼らが再び山西省を訪れ、帰国前に北京へ立ち寄ったところを取材させてもらいました。まずは、今回の植林活動の感想について、副団長の岩本壮太さんは次のように話してくださいました。
「去年、われわれが植えた木は、本当に根のつきが良かった。去年はまったく雨が降らず、植える前に水をバケツで運んで注ぎ、植えた後も水をやりつづけなければならなかった。そういう努力が実ったのかなあ・・・と思います。」
今回植林を行った周辺には農村が広がっていますが、農民達にとっては土地を開墾し、農作物を育てることが大切で、砂漠化を気にとめていなかった部分もあるようです。しかし、協会の対策が実を結び、地元の農民にも徐々に理解を得られるようになりました。今では農民達も植林活動に協力してくれているそうです。岩本さんは「今回、山西省での植林後、バスで世界遺産・平遥に行きました。あの辺りも、ずいぶん木が植えられていました。地域の人々が、植林を本当にやらなければならないと自覚し、植えてくれたのかなあ・・・そういう印象がありました」と話してくれました。
植林は時間のかかる作業で、なんと言っても地元の方々の協力があってこそ。そういう意味で、この山西省での取り組みは徐々に成果を見せ始めているといえます。協会の主な目的は、もちろん「砂漠緑化」なんですが、環境問題を通して日中友好の促進に少しでも役に立てば、という願いもあるそうです。副団長の岩本さんは、「個人的には、日中友好を願っています。日本と中国は、嫌いだから離れるとか、好きだから近づくということできない。いまのような政治問題が起こる前から、人民の交流をやっているわけです。だから、やっぱりお互いに理解をし合わなければならない。国対国という政治レベルじゃなくて、むしろ人民レベルの付き合い。それが、国同士の関係につながっている。上のから決められて、『お前ら仲良くしろ』って言われても、仲良くなれるもんじゃないと思います」と語ってくれました。
中国と日本は地理的な関係もあり、各分野で深い協力関係が続いていますが、環境の分野においても、このような動きがあります。今回の山西省の砂漠化にしても、このままほっておけば、中国だけでなく地球上の生態系にも影響を及ぼしかねません。環境問題は全人類共通の問題ですから、国境を越えた協力がこれからますます必要になってくると思います。「日中友好砂漠緑化協会」も、「植林は、同じ場所ばかりじゃなくて、いろいろなところでやっています。そんなに大げさじゃなく、細々と続けていこうと武村団長と話しています。また来年も何か計画したいと思っています」と抱負を聞かせてくれました。
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