東京新聞・中日新聞論説委員(日本語弁論全国大会審査員) 川村範行
先月の28日と29日、第15回日中友好の声日本語中国語弁論大会と第1回日中友好の声日本語弁論グランドチャンピオン大会が天津で開催されました。
「『もったいない』は日本の美徳だと知りました」
中国で初めて日本語弁論全国大会が天津であり、上位入賞した女子大生が「もったいない」をテーマに話した内容が印象深い。
日本人と食事をして食べ残したら「もったいない」と言われた。中国人は招かれて料理を食べ残すのが通例だが、日本人の習慣や考え方を知ったという。
それだけではない。地球資源の節約にも役立つ、この言葉を広げて日中の懸け橋になりたいと訴えた。
大会は中国日本語学会と東方通信社(東京)などが主催し、各地区予選を勝ち抜いた学生ら計二十一人が出場した。
審査員は日中双方で計十五人。自由弁論のほか、即席弁論ではその場で与えられたテーマ「情報社会と私」というテーマをこなし、聞き応えのある内容だった。
中国の大学では日本語(日語)学科の創設ブームという。内陸部でも日本人向け観光や対日農産物輸出関係で日本語の需要が増えているのが理由だ。
現在、日本語学科を置く大学は約二百五十校、学生数二十数万人にのぼる。戦争の記憶が残る祖父母の代では孫が日本語を学ぶことに抵抗感があるという。だが、言葉には文化の違いを受け入れ、その国への親密感を増す力があるようだ。
今年四月に反日デモが起きたが、日本語教育に力を入れる天津では「日本のことをよく知ったうえで過激な行動を慎むように」と学生を説得したという。
日本語を学ぶ学生は貴重な「知日派」として、相互理解の懸け橋になる。日本語教育への協力や留学生の受け入れ態勢の充実など、知日派の育成を日本はもっと支援するといい。
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