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僭越ながら「徳」についてー『項羽と劉邦』読書感想文(前半)
   2005-09-30 18:02:15    cri
 2002年はますます中国が注目される年になると思う。流行りそうなものはすぐかぎつけるのがミーハーの身上。今年は中国語でも習おうかという勢いである。という不純な動機もあって、お正月は司馬遼太郎の『項羽と劉邦』上・中・下、約1000ページを読破。恥ずかしながら『プレジデント』とかいう雑誌につとめながらも三国志を読んだことがない私。編集部で三国志だ、諸葛孔明だ、劉備玄徳だ、なんだ、というような話題になると頭の中が「εαδpζiηo?dΗ〆ÅΥΨΦ…」とまったくの文字化け状態になる。これはいかんのではないか、と常々思っていたが、読まなければならない本は山ほどあって、三国志までついに辿り着けないでいた。実家に帰ると父が、「三国志?うちに吉川英治のが十巻ある」と言って、ドーンと出してくれた。ぱっと開けてみるといきなり二段組みで即座に断念。「やめとく。お正月に読み切る自信ない」。それで、三国志より400年ほど古い話になるけれども、司馬遼太郎の『項羽と劉邦』でお茶を濁した。

 でも「お茶を濁した」と片づけるには面白すぎる本だった。なにが面白かったかといえば、司馬遼太郎描く英雄と彼らをとりまく人物像。中巻の帯に、「この本にはあらゆる人間の典型が描かれている」とあったがまさにそのとおり。なかでも主役の一人、劉邦は最も魅力的で、最も不可解な人物だった。司馬遼太郎が劉邦に入れ込んでいることは読んでいくとすぐわかる。私は司馬遼太郎が、劉邦を通じて語りたかったことの一つは、「徳とはなにか」ということではないかと思う。たとえばこういう表現がある。

 劉邦の場合、小さな我を、うまれる以前にどこかへ忘れてきたようなところがあった。…虚心は人を聡明にするものであろう。じつのところ、劉邦の取柄といえば、それしかないといっていい。張良は語りながら、途方もない大きな器の中に水を注ぎいれていくような快感をもった。

 張良というのは、のちに劉邦のブレインとなる、道家の思想家である。秦朝撲滅に人生を賭けた熱い人間で、頭脳明晰だが、リーダーシップと体力に欠ける。それを自分でも自覚していた。そこで劉邦の懐に飛び込んでいく。張良にしてみれば、劉邦を介して自己実現をしようとしたわけだ。司馬はこうも書いている。

 寛容と気前のよさとい劉邦の特質は、劉邦一個の能なしを補ってあまりがあり、かんじんのいくさのほうは一向にはかばかしくないのに、この一軍はつねに陽気で、ここだけ陽が照っているぐあいでもあった。

 こういう現象は2000年以上さかのぼった中国を見なくとも、西暦2002年の日本社会でも往々にして見うけられることだ。例としては適切ではないかもしれないが、一説によると、イチローをとりまく日本人記者たちはいつもピリピリしており、新庄をとりまく日本人記者たちは「野球ってたのしいな」のお祭りムードなのだそうだ。司馬遼太郎風にいくと連戦連勝の項羽がイチローで、打率は2割台で故障で休んでいたりするけれども、話題と取り巻きにはことかかない新庄は劉邦である。とすると新庄のほうが「徳」のある人間、ということになろうか……。ことほど左様に、司馬遷の『史記』に題材を求めた司馬遼太郎のこの作品は、生き生きとした人間の類型をいくつも提供してくれる。「徳」については、劉邦と張良の以下の会話が印象的だ。

(張良)  陛下は、御自身を空虚だと思っておられます。際限もなく空虚だとおもっておられるところに、智者も勇者も入ることができます。そのあたりのつまらぬ智者よりも御自分は不智だと思っておられるし、そのあたりの力自慢程度の男よりも御自分は不勇だと思っておられるために、小智、小勇の者までが陛下の空虚のなかで気楽に呼吸をすることができます。それを徳というのです。……さらに陛下は、欲深の者に対して寛容であられます。乱世の雄は多くは欲深で、欲によって離合集散するのです。欲深どもは、陛下のもとで辛抱さえしておれば自分の欲を叶えてもらえるとおもって、漢群の旗の下にあつまっているのです。漢軍の将は、十のうち八九はそのような者たちです。この連中が集まるというのも、徳というものです。

(劉邦)  それも徳か。

(張良)  治世の徳ではありませぬ。三百年、五百年に一度世が乱れるときには、そのような非常の徳の者が出てくるものでございます。

http://www.president.co.jp/pre/special/aiai/037.html

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