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北京最新引越し事情(上)
   2007-06-28 17:22:31    cri

北京友誼賓館

 北京に来て1年と4ヶ月、これまで住んでいた北京友誼賓館の中にある専門家アパートを出て、6月上旬に、中国人が住んでいる一般のマンションに引越しをしました。友誼賓館から北京放送局(中国国際放送局)がある八宝山までは、バスと地下鉄を乗り継いで1時間ぐらいかかるため、やや交通の便が良くないことや、一度中国の普通のマンションに住んで見たいということなどがキッカケでした。

 個人の都合で変わる訳ですから、日本語部の職員の人に家探しに付いてきて貰うわけには行きません。果たして私の中国語の実力で一人で家探しや契約が出来るかなと一抹の不安を感じながらも、「これもひとつの勉強だ」と思い立ち、5月上旬のメーデーの連休期間中から不動産屋を廻り始めました。そして1ヵ月後の引越しに漕ぎ着けることが出来たのですが、今回の経験の範囲内で知る事ができた北京の引越し事情をご紹介したいと思います。  

北京放送局玄関の掲示板

 日本で家を借りる、或いは家を貸すと言えば、不動産屋を通してやるのが普通ですが、中国の場合は、自分で見つけることが出来るならば自分で見つけよう、そうすれば不動産屋に仲介料を払わなくて済むと考える人が多いようです。この写真は、北京放送局の正面玄関を入ったすぐの所にある掲示板ですが、ここに何と「家貸します!」「借家求む!」というパソコンで打った張り紙が重なるように貼ってあります。同じ職場の人同士なので、信用できるという安心感はあるでしょうが、大家と店子という関係になってこじれると困らないのかなと余計な心配をしてしまいます。  

実習生が「借家求む!」

 また職場に限らず、不動産関係のサイトを調べてみても、貸し出す家の情報を載せた中に「直接連絡を!不動産屋の仲介はありません!」といった情報も結構見かけました。しかし私の場合は、相手先に直接電話を入れて内容を確認するほどの会話のレベルもなく、また「家探しを始めますよ~」と職場で言い始めたら、言われることといえば、「インチキ不動産屋には引っかからないで下さいよ!」というアドバイスばかりでしたから、個人が発信している情報が信用できるかどうかも分かりません。そこで大手の不動産屋を中心に、直接店を訪れて良い物件を探す正攻法を取る事にしました。  

大手の不動産屋

 結果的には、大手ではないが大変熱心な不動産屋に巡り会い、早い段階から何軒かの家を見に行きました。1軒目の家は、どういう訳だか単科大学の構内にある個人所有の家。まもなくこの家を出る予定の店子がまだ住んでいましたが、元気な中年女性の大家さんは、住人がいるのもお構いなし、いきなり家の中に上がりこんで案内してくれ、「自分の部屋も含めると3つの部屋があるが、気に入ったら私の部屋を貸しても良いですよ」と熱心に薦めてくれます。

 私が探す家の条件は、「家電全斉」、つまり家具や電化製品が全て揃っていること、家賃が3000元(4万8000円)以内でバスタブがあること、インターネットが出来ること、交通の便が良いこと、そして治安に問題がないことでしたが、1軒目のこの家は職場に行くのに、これまでと同様バスと地下鉄を乗り継ぐ必要があったので、結果的にはパスしました。何故また大学の中に個人が家を持っているのか不思議に思い、最近図図しくなった私は、大家さんに直接理由を聞いたのですが、「偉い人を知っていたからですよ」と正直に答えてくれました。  

借家情報

 この家探しの時に面白いことがありました。家そのものはOKかなと思ったので、付いて来てくれた不動産屋の若い男性と別れた後に、もう一度大学構内に戻り、家の周辺の様子を詳しく確認し始めたら、彼から携帯に連絡が入ってくるではありませんか。初めは何の用か良く聞き取れなかったが、何度かやりとりをした後に分かった事は、「入ると決めた時には、大家と直取引をせずに、私の店を通して話を進めて下さいよ」という事でした。こちらの頭ではそんな事は思いもつかない発想ですが、そうか、そんなケースが良くあるのかなと感じさせられた次第です。

 この話しを知り合いの中国の人に話したら、「中村さん、こんな手もありますよ」と言い出しました。その手とは、不動産屋の従業員に家賃の十分の一でも渡しておいて、後は大家と直接話しを決めてしまう。その額は、従業員が会社からもらう手数料より高いはずだから、彼も喜ぶでしょう。なるほど!「三方一両損」ならぬ「三方一両得」と言えるかもしれません。  

地下鉄「軍事博物館駅」

 3軒目に見に行った家は、地下鉄の軍事博物館駅からわずか5分というのが大きな魅力。そして2002年の築なので割りと新しく、70平米ほどの広さがあるのに家賃は3000元。その上、これまで住んでいた若い夫婦がパラボラアンテナを付けており、そのまま残していくというではありませんか。友誼賓館では見ることが出来たNHKなど海外のテレビ放送の視聴は、今回の引越しで諦めざるを得ないと考えていましたが、これは朗報。バスタブはありませんでしたが、風呂桶を置くスペースはあったので、自分で購入して設置すれば問題はない。「よしこれに決めた!」と思いました。

 ところが世の中ままならぬもので、翌日、不動産屋からの連絡ですと、「どうも日本人には住んで欲しくない」という考えを持っているようだと言います。北京に来てからは出来るだけ日本人ということを言うようにしていますが、これまでは反日感情を表に出す人には遭遇しませんでした。こんな所でお目にかかってしまったかなと思いながらも、一度直接会って「友好人士」であることを説明したいと思い、不動産屋に仲介をお願いして会うことにしました。  

軍事博物館界隈 

 実際にあって話してみると、日本人が嫌いという訳ではありませんでした。旦那さんの仕事柄日本人との接触もあるし、家で使っている電気製品はほとんど日本製品だといいます。では何故ダメなんですかと聞くと、「今のマンションには、職場の同僚が多く、親密な間柄の人が多いが、外国人だとコミュニケーションが上手く行かず、トラブルを起こす可能性がある」と言います。この家が気に入った私は、「基本的なコミュニケーションは大丈夫です!トラブルを起こすようなことはしません!」と繰り返しましたが、そんなやり取りをしている時に、大家さんが意外なことを言い出しました。

 「家賃が6000元ならば、貸しても良いですよ」というのです。最初に不動産屋に提示していた家賃の倍の額です。その理由は、「外国人には外国人料金がある」とおっしゃる。確かに以前は、外国人は中国人とは別の高い料金でした。しかし今や中国もWTOに加盟して、二重料金体系は許されない時代。国際化することを中国語では「国際接軌」(国際的な基準に合わせるの意)と言い、流行語にもなっています。そのことをご存じないのか、或いは高い家賃にするための戦術として使っているかはハッキリしませんが、「今や飛行機代も汽車の料金も、外国人でも中国人でも同じですよ」と説得しながら、3500元までならば飲むが、それ以上なら借りるつもりはないと答えました。結局この日の話し合いは、物別れに終わりました。

 外国人が多く住む北京市東側の朝陽区などには、バスタブ付きの借家は結構あるようですが、私が探し求めている西側地区には少なく、家探しは長期化の様相を見せ始めました(つづく)

(写真、文:中村 治)

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