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故宮に保存されている景泰藍 |
景泰藍 |
1450年から1456年にかけての間は、中国では、明王朝の「景泰」年間に当たります。この期間、当時の都・北京では、金属を胴体にした焼き物にかける上薬の材料として、藍が見つかりました。以来、アラビアからの琺瑯は(1)「景泰藍」と呼ばれるようになりました。
七宝焼きの一種といえる「景泰藍」は、金属の胴体に金のラメで模様をつけ、上薬を埋めていくという作り方をしています。明清両時代には皇族しか使えませんでした。今では、都市のオブジェからインテリア、女性のアクセサリー、万年筆、箸、家具、調度品まで、広く人々に親しまれています。
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故宮に保存されている景泰藍2 |
故宮に保存されている景泰藍3 |
景泰藍のアクセサリー |
「景泰藍が愛用されているのは、皇族専用品としての高貴に満ちた雰囲気や、金属と磁器の艶の見事な照り具合、そして製法が複雑なことにある」と、「景泰藍」のデザイナーの第一人者として活躍している張同禄さんが、説明してくれました。
私は、友人の紹介で、北京の北側にある中日友好病院近くの張同禄さんの工房を取材することができました。
今年66歳の張さんは、18歳の時からこの仕事一筋でやってきました。北京工芸美術工場の副社長を経て、今は、自分のデザイン室を作り、全国各地からの注文に追われる毎日を送っています。
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張同禄さんの作品:花生け鉢 |
張同禄さんの作品:壷 |
張さんは、50年近く没頭してきた「景泰藍」のことを、(2)「火を浴びてから再生する鳳凰」に喩えています。というのも、「景泰藍」は、上薬をつける段階で、上薬が完全に埋まるまで、4、5回800度の高温で焼かなければなりません。繰り返すたびに、色が鮮やかになります。張さんは、その点に心が惹かれたということです。
また、健康、安定、繁盛など縁起のいい模様を描く伝統的デザインも、楽しく仕事が出来る力となり、自由自在に創作する源にもなっていると話しました。
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春を告げる鶏 |
90年代から、「景泰藍」は低迷していましたが、ここ数年、生活水準が向上するにつれて、見直されるようになりました。特に、(3)インテリア市場での需要が増えているということです。
2005年、張さんのところにハルビン駅から広場に置くオブジェの注文がありました。張さんは高さおよそ8メートルのオブジェを製作しました。その後、ハルビン濱河公園のためにも、12の干支を「景泰藍」で作りました。
2004年、100周年を迎えた(4)パリ国際博覧会に、張さんは、「吉羊宝灯」を出展し、特別賞が授与されました。昔中国では、羊は縁起のいい動物として大事にされていました。大きい羊は「美」とされました。また、(5)「羊」の字は「祥」とも通じ、(6)「吉祥」の意味も含まれていました。「灯」は、福の光のシンボルになっています。
張さんは、これによって、「幸せや長寿の灯りを永遠に照らす」ことを表現しました。
「双福錦」は同じく2004年のパリ博覧会に出展されたもので、二つのキンケイが表されています。展示された最初の日に、購入の注文が入ったと、張さんは目を光らせながら紹介してくれました。
「私は何も趣味も持っていない。でも、景泰藍のおかげで、思ったことや感じたことを、思う存分表現できた。毎日が充実していて、幸せに思っている」と、張さんは満足げに話していました。
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張同禄さん |
張同禄さんと |
張同禄さんは、(7)「中国工芸美術巨匠」に指定されています。
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