中国では旧暦の1月1日から、つまり今年は今日2月7日から、鼠年になります。
中国では、大晦日の他にも伝統的なお祭りの時にはよく餃子を食べます。その理由としては、具にするいろいろな食材は、家の大事な宝物と見なされるからです。これにちなんだためか、食材をかき集めることが達者な鼠が、工芸品になると、食材がいっぱい入った大きな袋を背負って前に向かう姿になっています。財産をいっぱい集め、豊かになるというシンボルで、縁起のいい物です。
とは言いながら、一方で鼠は、大事な穀物を食べたり、木造の家や家具などをかじったりしますから、憎まれている動物でもあります。また、目が小さい上に、逃げ足が速く、捕まえるのに苦労するので、鼠は人間から嫌われる存在でもあります。鼠に関する諺:があります。直訳しますと、「通りを横切る鼠を、皆『捕まえ』と叫びながら叩く」という意味になりますが、ここでは、鼠は悪い人または、嫌われ者のたとえです。例えば、皆に嫌われている人が周りから散々批判されたときの様子を、「」と言います。
人間に追われて鼠が逃げる様子を表現したものとして、という熟語があります。「」は頭を抱える。「」はネズミが逃げ回る、「頭を抱えて、鼠のようにあたふたと逃げる」という意味です。これも悪い人のことを形容するときに使われます。例えば、町で暴力を振るう少年が、武術の達者の人にやっつけられて、あわてて逃げる様子を表すのに、この「」を使います。
家の中で鼠を見たら、多くの人は、素早く傍にあるものを投げつけて、捕まえようとしますね。でも、その瞬間、家具を壊してしまうのではないかと、心配になり、戸惑ってしまう場合もよくあります。これを、。「投鼠」は「ネズミに石などを投げる」、「忌器」は「家具などを壊すのではないかと心配して、戸惑う」という意味で、悪人や悪習を除きたいが、はたへの影響を考えると思い切ってできないという戸惑う気持ちを喩えています。
鼠に関する言葉はマイナスのものが多いようです。次は鼠の、顔つきから出てきた熟語です。
まず、目です。鼠の目は小さくて、周りをきょろきょろ見ていて、余り気持ちの良いも「きょろきょろする、或いはこそこそするさま」を表します。
もう一つ、鼠の目に関係する熟語をご紹介します。実際に鼠がどれぐらい先のものが見えるのかは、よく分かりませんが、中国では、その視力は、一寸、つまり3センチぐらいで、ごく近いところしか見えないと思われています。ですから、目先のことにとらわれて、遠い将来の見通しがつかない人を喩えるのに、鼠の目のように、一寸の先のものしか見ないという意味のと言います。
例えば、あなたは、目の前のことだけにとらわれて、大きな仕事ができない。
と、私のような平凡な人間が、よく言われるフレーズのようです。
鼠は、知らないうちに、家の宝物である食料を食べ、いつも隠れています。捕まえるのに一苦労する上に、繁殖力が強くて、人間の家族を悩ませています。このため鼠がいなくなって欲しいという願いを込めた民話があって、広く親しまれています。鼠の娘が嫁ぐ時の長い行列は、箱にいっぱい積んだ嫁入り道具を多くの鼠が担いだりして、にぎやかです。
湖南省では、この日になりますと、鼠の結婚式を邪魔してはいけないと、箱の蓋の開け閉めを禁止しています。そして、次の日の朝には鼠が出入りする穴を塞ぎます。これで、鼠がもう家に居なくなったと安心するのです。また、他の地方では鼠の結婚式の邪魔をしてはいけないと、この日の夜は早寝をするというところもあります。もし、この日鼠の邪魔をしてしまうと、鼠の怒りを買い、この年一年間は鼠に悩まされることになるという訳です。
この「老鼠嫁女」の民話は、切り紙のモチーフになっています。赤い紙で出来たこの切り紙は、春節の大事な飾り物になっています。中国のこの「鼠の嫁入り」、日本語にある「狐の嫁入り」という言葉と関係があるのかどうかは良く分かりません。リスナーの皆さんの中でご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけると有難いです。(文 朱丹陽)
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