まわりには、結婚年齢になったのに、まだ独身でいる若者が増えています。特に、男性の方が30才を超えてもガールフレンドがいないケースが多いようです。知り合いの中には、そういうような男性が二、三人います。私は、よく「綺麗で、(1)やさしい女性を選んでいるでしょう」と、冗談半分にその理由を聞いたら、「家を買うお金もないのに、恋する資格はありませんよ」という返事が返ってきました。
今、中国では、男性が住宅を持っていることが、結婚の条件の一つになり、(2)付き合いの前提にもなっているからです。
北京のような大都市では、住宅の価格はこの2、3年高騰する一方です。普通の公務員やサラリーマンの場合、30代では、その給料ばかりか、(3)ボーナスをすべて注ぎ込んでも到底気に入ったマンションを買えそうもありません。放送局の若者の中には、頭金などで親の援助を受けて、職場の近くにマンションを購入した人もいます。「(4)株で設けたお金で、頭金を払ったよ。そうでもしないと、結婚はとても無理だ」というのは、放送局の(5)エレベーター内で交わされた若者の会話です。
男性がマイホームを準備して、結婚することは中国の昔からの慣わしでした。新中国になってから、住宅は、賃貸や売買がなくなり、国や会社から貸与されるようになっていました。
そのとき、結婚のための住宅問題は、夫の実家に同居するか、夫か妻の職場の寮に臨時的に住むかして、国か会社から貸与されるまで我慢するというような形で解決していました。住宅が与えられるまで待たされる期間は10年、20年になる家庭も少なくありませんでした。
ということで、結婚して賃貸住宅を借りることは、これまでは社会的にも、家族的にも通用しませんでした。男性が住宅を用意して花嫁を迎えるスタイルは深く根付き、少なくとも40代後半の中国人の脳裏には深く焼き付いています。
けれども、今は状況が変わりました。1990年代後半から、国や会社から住宅を貸与される制度が廃止され、住宅は商品化されました。市民生活における住宅問題は、次第に大きくなり、特にここ数年は、一大問題になったと言えるほどです。この変化は若者の結婚にも波及しています。男性は、自力で家を買わなければならないようになりました。女性のほうは、男性が家を持っているかどうかを、家族ぐるみで注目しています。賃貸物件がいっぱい出回っている今も、若者やその親の間では、これを新世帯の家として使おうと思うことは少ないようです。
「何がなんでも家がないなら、結婚しない」。これは結婚適齢期の女性が最も大事にされている証拠となり、それは「賃貸の家は、結婚の新居にならない」という言葉にも表れています。
いままでの慣わしの影響や住宅事情の変化の中で、マイホームは、中国の若者たちの結婚にとって厳しい条件になってしまいました。
でも、10年ぐらい経てば、賃貸物件への思いも変化し、家は、(6)「結婚しない女性、結婚できない男性」の言い訳にはならなくなるかもしれません。
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