IAEA・国際原子力機関のエルバラダイ事務局長が23日、イランの核問題に関する報告書を安保理に提出しました。
報告書は「イランは今年3月24日採択された安保理決議1747号を守らず、猶予期限の今月23日になってもウラン濃縮を継続し、さらに、過去の数週間で濃縮規模を拡大し、またナタンツの核施設で遠心分離機を倍増させるなど、IAEAの査察に対し誠意が欠けている」と指摘しました。
世論は「5月23日でイランに対する安保理の追加制裁決議1747号の期限がきた。この日、IAEA事務局長が報告書を提出したことにより、安保理でイランに対する更なる追加制裁決議の発動に向けた論議が活発になる」と見ています。
しかし、イランに対する制裁で国際社会は意見が一致していません。
「南ドイツ新聞」によりますと、IAEAのエルバラダイ事務局長が安保理に提案し、イランがウラン濃縮の中核技術を把握し、核開発計画が実施段階に入った以上、今は濃縮活動の全面停止よりも、現段階の濃縮活動を認め、産業規模の濃縮を防止し、査察の拡大と核拡散防止条約枠内での解決を求めることの方が現実的であるとしています。
エルバラダイ事務局長と同様、一部のEU諸国は「当面の事実を認め、イランに限定的な濃縮活動を認めるべきである」との意見をもっています。
しかし、アメリカは「エルバラダイ事務局長と一部EU諸国の意見はイランの核問題の解決に役に立たず、安保理の権威を損なう」との見解を述べています。
イランのウラン濃縮に対し、アメリカはこれまで「核兵器の開発につがなる」と警戒し、その核開発計画を壊滅させようとしています。
アメリカはまた、イラン企業、特に核開発と兵器製造に関連する企業の海外口座を凍結し、貿易を中止するなどイランに対する経済制裁の強化を求め、対イラン貿易で企業への借款保証を提供しないようEU諸国に求めています。
一方、EUの主要国であるドイツはイランと長期的で密接な関係を維持しています。
イランでの大きな利益をもち、EUの中で対イランの第1の貿易相手国であり、イランとの貿易で企業への借款保証を提供しています。
武力行使ではアメリカのブッシュ大統領が「外交手段が優先であるが、武力行使も放棄しない」との立場を繰り返し、アメリカ海軍は3月イランを想定してペルシャ湾でイラク戦争以来最大規模の軍事演習を行いました。
一方、EUにとってイランは中東地域の重要国であり、イラン情勢の安定はEUの安定と経済に大きな意義があるため、圧力をかけつつ、交渉のルートを維持する必要もあると考えています。
また、中国とロシアはイラン核問題については、EUと似た立場をとっています。(ジョウ)
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