ロシア連邦議会代表団は、エストニアが旧ソ連赤軍のタリン解放記念碑を撤去したことにより、日増しに悪化している両国関係の改善を求めるため、30日、エストニアの首都タリンを訪れましたが、これまでの双方の交渉は成果を得られず、互いの立場には大きな差があり、ロシア側関係者は今回の訪問を楽観視することはできないと語っています。

　ロシア連邦議会代表団のゴバリョフ団長は、「今回訪問の目的は、この記念碑を保護するために拘束された人の釈放や、元の場所での記念碑復元を求めることにある。この問題についてのロシアの立場は明確である。歴史的事実と正義は、元の場所に旧ソ連赤軍のタリン解放記念碑を復元することを要求している。エストニア当局は撤去した記念銅像をタリン軍人墓地に安置する決定を行なったが、ロシアはこれを受け入れない。この決定は国際法に違反している」と述べました。

　ところで、4月26日、エストニア政府はタリン市中心にある旧ソ連赤軍タリン開解放記念碑の撤去命令を出しましたが、当日夜、1000人に上る人々が記念碑の周辺に集り、この撤去命令に抗議し、警察と衝突を起こし。1人が死亡し、150人が負傷したほか、800人が拘束されました。こうしてロシアとエストニア両国間の矛盾はエスカレートしたのです。これを受けてロシアのプーチン大統領は28日、これに大きく注目するとして深刻に受け止める姿勢を示し、ロシア連邦会議のミローノフ議長も27日、エストニアとの国交断絶を大統領に求める決議の採択を議員たちに強く要求しました。そしてロシア外務省も声明を発表し、エストニア側の記念碑撤去という行為を非難し、「エストニアが反ファシスト戦争勝利記念日の前夜に記念碑を撤去したことは非人道的で、歴史を冒涜する行為だ」と指摘し、撤去取消しを強く求めました。

　エストニア政府による記念碑撤去後、エストニアに反対する勢力がモスクワなどロシア市民とマスメディアの中で広がっています。モスクワのロシコフ市長は28日、ロシア中央政府と地方の各政府がエストニアとの金融・経済関係を凍結するよう呼びかけたほか、声明を発表し、「記念碑の撤去は、文物を破壊する国家的行為であり、世界反ファシスト戦争で犠牲になった各民族の兵士を侮辱する許せない行為だ」と非難しています。ここ数日、モスクワやサンクトペテルブルクの多くの人々はエストニア大使館前で集会を開き、エストニア当局による記念碑撤去に抗議しています。

　このような情勢を前に、エストニアのピート外相は「エストニア側はロシアといつでも公開的対話を行う用意がある」と表明しました。これに対しロシア側も、積極的な姿勢を示しています。ロシア連邦議会代表団のコバリョフ団長はタリンで、エストニアの議会副議長と会った際、「ロシアはエストニアとの国交断絶に踏み切ることは絶対にない」と強調しています。

　報道によりますと、ロシア連邦議会代表団のタリン訪問期間中、両国の高官は記念碑問題について直接の意志疎通に達することが求められ、これが対立している両国関係の緩和に役立つよう期待されています。しかし、いまの状況から見れば、両国関係の成り行きはなおもはっきりしていないのが実情です。