イラクのマリキ首相は18日、今年の年末に、イラクの治安権限がイラク政府に移譲されることを明らかにしました。しかし、マリキ首相がこれを述べてから数時間以内に、バグダッドでは4回も爆弾テロが発生し、200人近くが死亡、250人が負傷しました。これは今年2月、イラク駐留アメリカ軍とイラク治安部隊が新しい治安計画を実施して以来、起きた最も大きな爆発事件です。イラクの治安情勢は依然として緊迫しています。
報道によりますと、18日、シーア派住民が多く住むバクダッドのサドルシティーの市場で起きた自動車による爆弾テロでは、118人が死亡し、139人が負傷しました。マリキ首相が今年の年末に、イラクの治安権限がイラク政府に移譲されると述べた後の数時間以内に、爆弾テロが数回も発生したことから、テロの首謀者は明らかにテロの実行場所と時間を合わせたといえます。テロの現場は地獄のようで、バスの中で生きたまま、焼き殺された被害者もいました。その場にいた男性は、「マリキはどこだ!ここで発生したすべてをみろ!」と叫んだということです。
今年2月から、ブッシュ政権のイラク駐留軍の増派計画を実施し、宗派間の殺し合いや暴力活動を抑えるため、多くのアメリカ軍とイラク治安部隊がバグダッドに派遣されましたが、情勢は好転しませんでした。18日に起きた爆弾テロは、マリキ首相をはじめとするイラク政権が平和と治安をの回復する上で、より厳しい情勢に臨んでいることを示しています。その理由として、第一に、テロ活動が宗派間の殺し合いを激化させ、マリキ政権への信頼を失わせていることです。18日の爆弾テロは、明らかにシーア派に対して行われたもので、アルカイダが関与しているとみられています。2月中旬以来、アメリカ軍とイラク治安部隊が合同で行った「法律と秩序」という掃討作戦によって、シーア派のサドル師指導下のマフディ軍は控え目に対処していましたが、18日のテロ発生後、マフディ軍は一連の報復行動を取るのではないかと懸念されています。そうなれば、イラク情勢は、ますます統制がとれなくなるでしょう。マリキ政権は、暴力の取り締まりや治安維持で成果を上げられず、国民の信頼を失っています。
第二に、アメリカ軍をはじめとする多国籍軍部隊が2003年フセイン政権を倒した後、イラク人による治安部隊を作り、その訓練や作戦指揮、情報の収集などに協力してきましたが、18日に発生したテロは、イラク政府の治安部隊が未だに国内の安全を維持できないことを示しています。この状況をどのようにして改善するかをマリキ政権は真剣に考えなければなりません。
第三に、マリキ政権は米軍の撤退問題でブッシュ政権のいいなりになっているため、イラク国内で孤立する危機にあります。18日のシーア派に対するテロでは、シーア派の民衆はマリキ政権に不満を抱いたに違いありません。シーア派の支持を失ったマリキ政権は、その政治的基盤と影響力をさらに弱めていくでしょう。(翻訳:藍)
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