イギリスのブレア首相は21日、議会下院で、向う数ヶ月以内に、イラクに駐留するイギリス軍を現在の7100人から5500人に減らすことを発表しました。その一方で、イラク軍の訓練や治安維持を支援するため、2008年も駐留を続ける可能性を示しました。
アメリカにとって最も重要な同盟国であるイギリスが、イラク駐留軍の撤退を決めたことについて、専門家は次のように分析しています。
まず、イギリス国内の政治的ニーズから見てみると、ブレア首相は、イラク問題でずっと国内世論からの批判を浴びてきました。イギリス国内の各党派や一般市民は、イギリスがアメリカと共に2003年に始めたイラク戦争を、ブレア首相の「外交上の大きなミス」と批判してきました。それによって、ブレア首相の支持率は急速に落ち、与党・労働党の内部でも首相の辞任を求める声が高まっています。イギリスのメディアが20日に発表した世論調査の結果によれば、現在、保守党の支持率は40%であるのに対し、ブレア首相が率いる労働党の支持率は、9ポイント低い31%になっています。今年5月にイギリスの地方議会議員選挙が行われる予定で、また、ブレア首相も今年中には退任することになります。したがって、ブレア首相がこの時期にイラク駐留軍の撤退を決定したのは、不利な状況に陥っている労働党を救うためだと見られています。
また、イギリス軍は、イラクとアフガニスタンで同時に活動を展開していることから、戦闘能力が落ち、装備が不足する状況に陥っています。ブレア首相が就任してから、ずっとアメリカの世界戦略にあわせ、アフガニスタンやイラクなど海外での軍事活動に取り組んでいます。しかし、イギリスの防衛白書によれば、イギリス軍の軍事活動の能力は、せいぜい2つの中規模の軍事行動と1つの小規模の軍事行動を同時に行うことができる程度だとしています。したがって、イギリス軍にとって、イラクとアフガニスタンなどで同時に活動を展開するのは、すでに実力を遥かに超えたことになってしまいました。さらに、イギリス陸軍のダナット参謀総長など軍の高官も、「駐留イギリス軍が、むしろイラクの治安を悪化させている」として、駐留軍の撤退を求めていました。これら一連のことによって、ブレア首相がイラク駐留軍の撤退を決めたものと見られています。
ところで、イラク駐留イギリス軍の撤退は、ブレア首相が同盟国のアメリカと相談した上で決めたものです。アメリカホワイトハウスの報道官は、このほどブッシュ大統領が、ブレア首相と会談したことを明らかにするとともに、「イラク駐留軍の撤退は、イギリス軍がイラク南部での治安の任務を部分的に終えたことを表している」と述べました。また、ドイツを訪問中のアメリカのライス国務長官も、イギリスとアメリカ両国政府は、イラク駐留イギリス軍の撤退について相談したことを認めた上で、「この決定は、アメリカ軍を含む多国籍軍には影響はない」と述べました。
このほか、イギリス保守党のキャメロン党首は、ブレア首相のこの決定を歓迎すると述べました。しかし、それと同時に、イラク軍がイラク南部の治安を維持できるかどうか、またイラクに駐留しているイギリス軍が、自らの安全を確保できるかどうかということに、懸念の意を示しました。(翻訳:鵬)
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