国連安全保障理事会は14日、レバノンとイスラエルの軍事作戦で悪化する中東情勢をめぐり、緊急会合を開きました。会合が終了した後に発表された声明は、アナン事務総長が、紛争の沈静化に向けて当事国へ3人の特使を派遣することを歓迎し、国連特使への協力を関係各国に呼びかけました。この会合は、レバノン政府の要請に応じて行われたものです。
今月12日、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織「ヒズボラ」は、国境地帯でイスラエル軍を攻撃しました。それにより、イスラエル軍兵士8人が死亡し、2人が拉致されました。これを受け、イスラエルは報復するため、海、陸、空軍を出動させ、1982年にあったレバノンとの戦争以来、レバノンに対する最大規模の軍事作戦を始めました。イスラエル軍は、レバノン南部の主な道路や橋、空港、発電所などを空爆し、レバノンを陸海空から封鎖する作戦を展開しました。それにより、レバノンの民間人数十人が死亡しました。
14日の緊急会合が始まる前、国連の平和維持活動担当事務次長のゲーノ氏は、イスラエルとレバノンとの紛争について、「今回、イスラエルがレバノンへ侵攻するのは、2000年にレバノン南部から撤退して以来もっとも厳重な危機である」と述べました。また、「両国の軍事作戦が展開されているため、レバノン南部の平和維持のため組織した国連のレバノン暫定軍は、レバノンとイスラエルとの暫定境界線付近で監視することができない」と述べました。
この緊急会合で、レバノンのマハモード国連駐在大使は、「レバノンへの侵攻は、関係国際決議や法律の違反だ」と、イスラエルを非難した上で、イスラエルが停戦し、レバノンの封鎖を解除する決議をいち早く採択するよう国連安保理に呼びかけました。また、マハモード大使は、「レバノンは国の全面的な独立に向けて努力しているが、イスラエルの侵攻は、その妨害となった」と述べました。
これに対し、イスラエルのギラーマン国連駐在大使は、「イスラエルの軍事行動は、レバノンによる攻撃を受けての直接な反応だ」と強調しました。
また、アメリカのボルトン国連駐在大使は、拉致したイスラエル軍兵士をただちに無条件に解放することをレバノンの民兵組織「ヒズボラ」に要求しました。
そして、国連駐在の中国の劉振民氏は、この会合で発言し、安保理の関係決議にしたがい、自制を保って外交ルートで問題を解決することを強調しました。劉振民氏はその際、「イスラエルはレバノンに対する封鎖を解除し、レバノンは、拉致したイスラエル軍兵士を解放すべきである」と、両国の軍事行動の停止に向け、中国の立場を表明しました。
この緊急会合で、各国はそれぞれ意見の食い違いがあるため、レバノンとイスラエルとの紛争の対応について結論を出すことができませんでした。一方、国連安保理のアナン事務総長が、中東情勢の悪化を受け、問題の解決に向けて当事国へ派遣した3人の特使は14日、エジプトの首都カイロに到着し、関係国家との協議を始めました。
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