IAEA・国際原子力機関の理事会が4日、イラン核問題を安保理に付託する決議を採択したことを受けてイランの関係部門は5日、アハマディネジャド大統領の命令により、当日から自発的な協力を中止し、IAEAによるイラン核施設に対する強制検査の受入れの拒否を発表しました。これによりイラン核問題の解決には見通しがなくなったかのようですが、専門家は「各側の態度や、その根本的な利益関係から見れば、イラン核問題にはまだ交渉の余地がある」と見ています。
イランのモッタキ外相は5日「イランは、これまで2年間続けてきた核問題での相互信頼関係を築くために講じたすべての自発的協力措置を打ち切った。イランには、『核拡散防止条約』の付加議定書を履行する義務はなくなった」と表明しました。同日、イラン外務省のアセフィ・スポークスマンは、イラン政府は去年議会が成立した関連の法律を必ず執行し、これまでの自発的協力措置を中止すると強調したものの、「イランは、これからも『核拡散防止条約』の枠組み内でIAEAと協力し、対話による核問題の解決を堅持していく。イランとロシアは、ロシアの打ち出した妥協案について引き続き討議していく」と語りました。
ところで、IAEAがその決議を採択する前に、イランは「もしイラン核問題が安保理に付託されれば、イランはすべての自発的協力措置を中止し、産業的規模のウラン濃縮活動を再開し、ウラン濃縮活動のロシアでの実施というロシアの提案を拒否する」と表明していましたが、いまイランは自発的協力の中止だけを表明したことから、イランは強固な態度を示したものの、現在の情勢をはっきり見極めており、産業的規模のウラン濃縮活動の再開には踏み切っていません。
ところが、IAEA理事会の決議は、イランに困難な選択を迫っているのです。まず、経済的には、イランはインフレと失業ではかなりの圧力を受けており、国内での改革が必要とする多くの資金は主に海外の石油会社と国際資本市場に依拠しているのです。ですから、一旦、国際的な制裁を受けてしまうと、イランの経済情勢はさらに悪化することになります。
専門家は、ウラン濃縮活動で各技術を全面的に把握するまで、イランは大きな技術的困難を克服しなければならず、それ相応の政治政策を制定する必要があります。ですからイランが『核拡散防止条約』から離脱しないかぎり、そのすべての核開発活動はIAEAの監督の下で実施することになり、このような状況で核開発計画は民用以外に利用しにくい」と見ています。
西側諸国にとって、交渉は依然としてイラン核問題解決での良策です。今、アメリカには武力攻撃実施の条件は整っておらず、また実質的制裁を実施しても、双方が損害を受けることになるのです。このほか、西側諸国の制裁はイランの核開発実施の決意を固めさせる可能性があります。そうなれば、イラン核問題だけでなく、中東情勢にも影響を与えかねません。ですからアメリカやイギリスなど西側諸国は「IAEAが決議を採択したものの、外交ルートによるイラン核問題解決の扉が閉ざされたわけではない」と再三強調しているのです。
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