イスラエル軍は14日、パレスチナのヨルダン川西岸の都市エリコにある刑務所を包囲し、そこに立てこもっているパレスチナ治安部隊と銃撃戦を交わしました。9時間後、拘束されている6人のパレスチナ人収容者が投降しました。
14日朝、アメリカとイギリスの監視員が突如撤退し、その直後、イスラエル軍は、戦車数十台と他の武装車両で刑務所を包囲し、そこに立てこもっているパレスチナ治安部隊を攻撃しました。機関銃と大砲による攻撃を受け、パレスチナ治安部隊の1人と収容者1人が死亡し、刑務所もイスラエル軍のブルドーザーの衝撃により破壊されました。
イスラエル軍の今回の行動は、2001年にイスラエル観光相ゼエビ氏の暗殺事件を指揮したと見られるPFLP・パレスチナ解放人民戦線のサダト議長と、兵器密輸容疑がもたれているパレスチナのアラファト元議長の顧問ショバキ氏など、6人のパレスチナ人収容者の拘束を狙っていると見られます。
イスラエル外務省のレゲフ報道官は14日、イスラエル軍の軍事行動について弁明しました。
「イスラエルは暴力のエスカレートと死傷者を望まない。しかし、問題はパレスチナ当局がこれら武装勢力メンバーを釈放しようとしていることにある。今回の軍事行動の目的は、武装勢力のメンバーがパレスチナ各地に亡命することによって、将来、彼らを捕えるために更なる大規模な軍事行動を取らざるを得ない状況を避けるためだ。」としています。
イスラエル軍の強硬な逮捕にパレスチナ人は強い憤りを覚えています。この時、大勢のパレスチナ人は刑務所を取り囲んで抗議活動を繰り広げ、イスラエル軍に向って石などを投げつけました。パレスチナ自治政府のハニヤ首相はこの日、イスラエル軍の軍事行動を厳しく非難しました。
「パレスチナ解放人民戦線の指導者サアダト議長とその他の人々に危害を加えないようイスラエルに警告する。PLO・パレスチナ解放機構のアッバス議長および関係各方面とこの問題について協議するつもりだ」と強調しました。
この日、マスクをしたパレスチナの武装勢力はガザ駐在のイギリス領事館に押し入って、火をつけ、また、現地にあるアメリカの教育機関にも襲撃を加えました。PFLP・パレスチナ解放人民戦線のメンバーは数人の外国人を拉致した後、サアダト議長がイスラエル側に射殺されたら、外国の大使館と領事館を襲撃すると警告を出しました。パレスチナの非難に対して、イギリスのストロー外相は、次のように弁明しています。
「我々は、直ちに監視員を引き上げるとパレスチナ側に通告しました。パレスチナは効果的な措置を取り、拘置所の状況を改善し、国際監視員の安全を保障しなければ、イギリスは自国の監視員を引き上げさせるとパレスチナ側に何度も警告しました」と話しています。
報道によりますと、今回の軍事行動は、イスラエルのオルメルト首相代行とモファズ国防相の授権を受けて行われたもので、保守派からの票を得るためだとしています。しかし、これを受けて、『エルサレム・ポスト』のベテラン記者ホフマン氏は、軍事行動はリスクをもたらすとして、「選挙を狙って行ったとしたら、危険だ。兵士に犠牲が出れば、選挙にかえって不利となり、逆効果にもなりかねない」と語りました。
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