EU・欧州連合の高官が16日ウィーンで、イギリス、フランス、ドイツ三ヵ国が、イランにウラン濃縮活動の停止と建設中の重水炉の中止を求める見返りとして、軽水炉を提供することを考えていると明らかにした。しかし、ヨーロッパの輿論は、イランがEUのこの提案を受け入れるのかについて懸念している。

　EUの高官はメディアに、「イランに軽水炉を提供することは、イラン核問題の一連の新しい解決案の主な内容の一つだ」とした上で、「イランがこの軽水炉を獲得する前提は、ウラン濃縮にかかわるあらゆる活動を停止することであり、また、イランのウラン濃縮活動はロシアで行うべきだ」と述べた。イギリス外務省の高官も軽水炉提供のことを確認したが、「この案はまだ最終的にまとまっていない」としている。

　15日、ブリュッセルで行われたEU外相会議は、EUが外交ルートによるイラン核問題の新しい解決案を準備していることを確認した。その内容とは、イランにウラン濃縮活動の停止を求める。イランに対して、より多くの経済援助を与え、政治面での協力を強化し、イランが安全で持続的かつ拡散防止の民生核計画の実施を支持するということである。EUのソラナ共通外交・安全保障上級代表は、「この案は、19日、イラン核問題を巡って、ロンドンで開かれるアメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツ6ヵ国外相会議の前に完成し、今月末までにイランに提出することが可能である」と話した。

　去年8月、EUはイラン核問題を解決するため、イランの軽水炉の建設を支援する内容を含む一連の案を提出したが、イランに拒否された。その根本的な原因は、イランがウラン濃縮活動を堅持するからである。だから、今回、EUが再び提出したこの案は、イランが受け入れるかどうかヨーロッパ各国の輿論は懸念している。今回のEU外相会議前後、イランは何回もこの新しい案を拒否した。イランの大統領と政府高官は、イランの核研究の権利の剥奪を目的とするEUの提案を拒否すると改めて強調した。

　それにもかかわらず、EUはイランの強硬な態度を憂慮していない。多くのEUの高官は、一連の新しい案は、より実務的で、西側諸国がイランの民生核エネルギー利用の権利を剥奪するつもりはないということをイランに表明するものであるから、イランは、おそらくそれを断る理由はないだろうとしている。

　一方、EUのイランへの軽水炉の提供案がアメリカに認められるかどうかも肝心な問題である。現在の状況からみると、楽観視できない。アメリカのホワイトハウスのスポークスマンは16日、記者会見で、EUのイランへの軽水炉提供案について反応を示しておらず、イランがとりあえず核研究を放棄すべきだと強調した。アメリカのボルトン国連代表もこの日、EUの一連の案の中、「飴と鞭はどちらも欠かせない。この両方の内容が含まれてこそ、軽水炉の提供問題について意見を発表する」と語った。

　このため、軽水炉提供案がイラン核問題を解決する鍵となるのは、各側、特に対立しているイランとアメリカが誠意を持つ必要があるということである。