「中国風」は、去年あたりから、中華圏の音楽シーンを大いににぎわせている新しい音楽ジャンルです。ヒップポップやR&Bなど、世界的に流行している曲風が中国にも浸透していますが、中国の伝統音楽を新しくアレンジし発揚させていきたいという発想から「中国風」が生まれたのです。簡単に説明すると、中国の伝統的な楽器や曲調をヒップポップやR&Bなどの現代音楽と融合させたポップス音楽です。

「中国風」の創始者を遡りますと、台湾のカリスマ歌手・周傑倫だといえます。彼が2001年にリリースしたセカンドアルバム『範特西』には、『双節棍(ヌンチャク)』という曲が収録されています。この曲は、中国のカンフーをテーマにして、ヒップポップ音楽と融合させた作品です。中国の有名な武道家でもあるカンフー映画の始祖・李小龍(ブルース・リー)の愛用の武器として、ヌンチャクはまさに「中国」というイメージが強いです。この作品の中で、ブルース・リーの提唱している愛国心や「忍ぶ」精神もリズムの強いラップで語られています。この曲は中国全土で大ヒットし、今でも記憶に新しいです。
その後も、ジェイ・チョウは、絶えずこのような作品を発表しています。彼によく歌詞を提供している作詞家・方文山(ビンセント・ファン)は、中国の古典文化に非常に詳しい方です。この2人のコンビで作られた「中国風」作品は、いつも評判となっています。たとえば、『髪如雪』、『東風破』、『菊花台』、『千里之外』。

ジェイ・チョウ以外、多くの有名な歌手がこのジャンルにチャレンジしています。R&Bが得意な陶[吉吉](デビット・タオ)は、2005年1月、『太平盛世(最高の世)』というアルバムをリリースしました。その中の『SUSAN説』という曲は、京劇の有名な劇『蘇三起界』のストーリーをモチーフにして、新しくアレンジした作品です。曲の中で、京劇の台詞をラップで語る所があり、評判となっています。
また、王力宏(ワン・リーホン)が今年リリースしたニューアルバム『蓋世英雄(ヒーロズ・オブ・アース)』も、全体的に「中国風」に仕上がっている一枚です。収録曲の『蓋世英雄(ヒーロズ・オブ・アース)』は京劇を、『在梅邊(梅の側で)』は、今年中国無形文化財に指定された昆曲(江蘇省昆山が起源の、中国で最も古い伝統芝居の一つ)を彼が得意なヒップポップ音楽にうまく取り入れています。
そして、つい最近、人気を飛ばした呉克群(ケンジ・ウー)がリリースしたニューアルバム『将軍令』のタイトル曲も、京劇と融合させた作品で、好評です。

女性歌手なら、台湾の人気アイドルグループ「S.H.E」が挙げられます。彼女たちの作品、『長相思』、『一眼万年』などは、中国の古い詩文を歌詞の中に取り入れており、曲調も中国的な特色があります。
実は、これらのビッグスターのほかに、中国風音楽にチャレンジしている歌手はたくさんいます。いまや、中華圏の音楽シーンで、「中国風」ブームが巻き起こっているような感じがします。同じようでも、それぞれの曲がそれぞれの特徴を持っています。このような作品を聞くと、きっと中国の深い文化を感じ取れるでしょう。
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