民族の独特な文化を持つシェー族、その総人口の十分の一、七万人が浙江省麗水市に住んでいます。麗水市には全国唯一のシェー族自治県、景寧シェー族自治県があります。また麗水市管轄下のほかの県や区にもシェー族の人がいます。シェー族のほとんどは交通の便が悪い山奥に住んでいているので、経済的にも教育水準も遅れています。そして今後の発展も政府の支援なしでは難しくなっているのです。
そこで地方政府は、少数民族に対して、優遇政策をとっています。麗水市民族宗教局の何品仁局長は、それについて、こう語りました。
「その一つは、浙江省政府はここ3年、少数民族の多い麗水市に対し、最優先に、毎年、300万元の交付金を拠出している。これらは主に少数民族の集落における道路や水道などの建設、村人の農業技術の養成などに当てている。また民族宗教局は扶助プロジェクトの作成段階から関与して、資金の使用を常にチェックしている。
また政府は、少数民族の幹部による少数民族の管理が非常に大事だと考えている。そこで少数民族幹部の選抜に力を入れている。今、中国では公開の試験で公務員を採用する制度を実施しているが、少数民族については、より多くの少数民族幹部の任命するため、特定の職位を与えている。2000年からの2004年までの五年間で、少数民族の公務員は15人しか採用されなかったが、2005年一年間だけで、13人の少数民族の公務員を採用した。」
さて、少数民族の援助の方法にはもうひとつあります。経済的に余裕のある人と少数民族の貧困者が「一対一」の関係を結び、救いの手を差し伸べるというものです。
雷青風さんも援助をもらった一人です。
雷さんは、今年二十歳。2001年、中学校を卒業した後、師範学校に受かりました。専攻は初等教育。今は麗水学院の二年生です。生まれた年に父親は事故で亡くなり、母親は彼を残して、遠くで再婚したそうです。そのため、彼は農業を営むおじいさんとおばあさんの元で育てられました。農村生活は貧しくて、小さい頃から、周りの助けを受けながら、学校に通いました。師範学校に入ってからは、学費の減免や貧困学生への補助金、そして家庭教師やセールスマンなどのアルバイトをして、生活費をなんとかしてきました。
2005年1月9日、雷さんには大きな出来事がありました。
雷さんは、その日のことを思い出しながら、シェー語で次のように話しています。
「ぜんぜん思いもよらなかった一日だった。その日、突然、クラスメートが私のところに来て、『先生が呼んでいるよ』と言った。自分がなにか悪いことをしたのかと心配しながら、職員室に入った。中には、先生のほかに見知らぬ人が何人もいた。その中のやさしそうな顔をした中年の男性が私に関心がありそうで、そして先生に『この学生ですか』と聞いたのだ。後で分かったが、この方は万さんという企業家で、近くの温州市で会社を経営しているということだった。民族宗教局から私の話しを聞き、助けてくれることを決心したそうだ。その日、万さんは私に3000元の学費と1000元の生活費をくださった。また、私をはげましてくださって、卒業まで援助してくれると私と約束した。万さんの応援は私にとって、まさに『雪の日に炭を送られる』ようなものだった。余りにもうれしくて、どう言えばいいか、わからなくなった」
万さんは、雷さんが卒業すれば、自分の会社で就職してもいいし、続けて本科生、修士、博士の道に進んでもいいと言ってくれたそうです。雷さんは、万さんの援助によって、将来への道は広がっていったのです。
今は、二週間に一回ぐらい、雷さんは万さんに電話、あるいは手紙を出し、今の生活や勉強のことを報告しています。また万さんは、人生の先輩として身の上相談にも乗ってもらっているそうです。
今年卒業する雷さんは、「まだ若いので、つづけて勉強したいんだ。万さんに対しては、いつも感謝の気持ちでいっぱいだ。将来、例え、万さんの会社につとめなかったとしても、何らかの形で、万さんの力になりたくてしかたない。そして、自分が自立したら、今度は他の助けを求めている人にも同じことをやってあげたい」と将来の抱負を語ってくれました。
さて一方、彼を援助した万さんですが、こちらは「自分が正しいと思うことをやっただけで、特別なことをしたとは思っていません」とさらっとおっしゃいました。
ところで、少数民族が住む地域は、経済が立ち遅れているものの、独特の民族文化や風俗習慣がよく残っています。麗水市民族宗教局の何品仁局長は、それを生かして、少数民族の生活環境改善に役立てたいと考えています。景寧シェー族自治県は、美しい山々と水が自慢。素晴らしい自然に囲まれた、桃源郷にも例えられるところです。山すそに広がる段々畑も風情があって、ここで栽培される「恵明茶」という緑茶は全国的にも有名です。今、地元では観光業を起こし、観光とシェー族文化の展示を行って、中国のみならず、国外からも多くの観光客が訪れる観光地となりつつあります。
私たちシェー族は独特の言葉、シェー語を持ち、古くからの豊かな伝統を守り伝えてきました。私はそんなシェー族の文化を誇りに思っています。ただ、麗水市に住むシェー族の多くが、経済的に決して豊かでないのも事実です。これからは、私たちの故郷の優れた自然環境と伝統的な民族文化を保ちつつ、同時に経済的にも発展していってくれれば・・そう考えています。(担当:藍暁芹)
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