むかし、むかし。欲張りキツネが食べ物探しに出かけ、どうしたことか、ある染物屋に家に入り込み、青い染め料が入った甕に落ちてしまった。やっとのことで甕から這い上がったキツネは、これはたまらんとそこを逃げだし、川辺にきたところ、他のキツネたちもそこにいて、日に照らされ全身がピカピカ光る青いキツネが来たのでびっくり。

　「あ、あ、あなたさまは、どなたでございます？」

　一匹のキツネが恐る恐る聞く。

　「うん？なんだ？」

　欲張りキツネはみんなが自分を見て驚き恐れているのに気付いて言った。

　「えへん！俺さまは天の使いだ！」

　これを聞いてみんなはさらに驚き、欲張りキツネをキツネの王とあがめた。そこで欲張りキツネは、これはいいと川の水で体を洗うことも忘れ、胸を張ってほかの獣がいるところまで歩いていく。

　ほかの獣も青色にピカピカ光る動物は初めてなので恐れおののき、みんなで欲張りキツネを獣の王とあがめ、なんと大きな象の背中に乗せ、獅子、トラなどがそれに続くというありさま。

　これに有頂天になった欲張りキツネは、遠くの山に住む母親キツネに手紙を書き、ほかのキツネに手紙を託けた。

　その手紙には、息子は体の色が変わり、いまは獣の王となったので、こちらに来て暮らせとある。手紙を受け取った母親キツネは、その手紙を託されたキツネに聞いた。

　「獣の王になったと書いてあるけど、家来にはだれだれがいるの？」

　これを聞いた手紙を託されたキツネ、王さまの母親は普通のキツネではないか不審に思っていたが、そう聞かれて答えた。

　「家来には獅子、トラと象がいます。それにわたしたちキツネは下っ端のほうですが」

これを聞いた母親キツネはびっくり、

　「冗談じゃないわ。そんな恐ろしい家来と一緒に暮らせるもんですか」と息子のいるところへ行くのを断った。

使いから戻ったキツネは仲間のキツネに言いふらす。

　「あれは普通のキツネだぞ。俺は奴の母親に会ったんだ。あいつの体に色はとれるんだぞ」

　これを聞いたキツネたち、自分たちが騙されたことに腹を立て、前のほうで象に乗っていい気になっている欲張りキツネに大声をかけた。

　「お前の体の色はにせものだ！！」

　これを聞いた欲張りキツネぎょっとして後ろを向くと、キツネたちが自分に向かって叫んでいるとわかり、あわてて「黙ってろ！」と怒鳴ったが、すぐにキツネだとわかるチッツ、チッツという声を出してしまった。

　これらのやり取りを聞いていた象は、そうだったのかとぶりぶりに怒り、欲張りキツネを長い鼻で背中から引きずり落とし、あっという間に踏み殺してしまったと！！やれやれ。