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日本人スタッフのつぶやき303 タクシーという「言葉の空間」

2014-09-16 16:12:34     cri    

 はじめまして!9月に入局いたしました林茉以子(はやしまいこ)と申します。以前北京の清華大学の大学院に留学しておりましたので、北京での長期滞在は今回で2回目です。これまでは、日本の翻訳会社で中国語と英語の翻訳をしておりました。「つぶやき」は読者としてずっと読んできたので、自分が発信できる側となりとても嬉しく思います。これからどうぞ宜しくお願いいたします。

 ところで、皆さんは中国のタクシーに対してどういったイメージをお持ちでしょうか。異国の地に降り立った時、空港を出て最初に話す現地の人である、タクシー運転手。その時の経験がその国に対する第一印象となることも多いのではないでしょうか。中国でも、きっと同じなのではないかと思います。

 私も初めて一人で北京にやって来て、着いたその日の夜11時頃に乗ったタクシーのことは忘れられません。正規のタクシーがどうしても見つからず、値段交渉をして荷台を後ろに取り付けた電動自転車に渋々乗り、10分で到着するはずの距離を1時間以上かけてようやくたどり着いた、その荷台にずっと座っていた時のこごえる寒さ、「一体たどり着くのだろうか・・・」という不安感は、数年経った今でもよく覚えています。そういった「スリリング」なイメージやご経験をお持ちの方も少なからずいらっしゃるのではないかと思います。

 しかしながら、その後2年間北京に住むことになり、中国の事情や中国語も分かるようになってくると、タクシーや運転手に対する印象が変わってきました。タクシーという空間が、一つの「コミュニケーションの場」に見え始めたのです。それは、中国が直接的コミュニケーションを重視する国であることの一例ではないかと感じ、今回トピックに選びました。

 北京での生活に慣れてしまうとほとんど地下鉄やバスで事足りてしまうので、タクシーに乗る機会というのはめっきり減ってしまうのですが、今回北京に来て二週間、健康診断に行ったり、その他手続きなどでタクシーに乗る機会が数回ありました。

 タクシーの運転手には色んな人がいて、無愛想な人もいれば、話し好きな人もいます。話が盛り上がる時には、お互いの出身地、最近起こっている出来事について話したり、私が日本人だと分かると日本の○○が好きだと言ってくれることもありました。でもこのような雑談にたどり着く前に、効率的に目的地にたどり着くために行き先を「うまく」口で伝えないといけません。コミュニケーションはそこから始まります。よく知られている場所であればその場所の名前を言うだけで通じるので簡単なのですが、もし目的地があまり知られていない場所だったりすると、どの道を使うとか目的地の周りに何があるか等、説明を加えなければなりません。時には、到着するまでナビのような案内を求められることも。説明が失敗し運転手が把握できないと、断られることもありました。

 今回約一年ぶりに北京に来てタクシーに乗って、「あれ?」と思ったことがありました。私は過去の経験から、いまだにタクシーに乗る時は行き先の住所や通り名はもちろん、携帯で地図なども用意して万全の体制で臨むのですが、行き先を説明し携帯の地図を見せると、「何ていう名前?今僕の携帯の地図に入力するからちょっと待って」と言われ、運転席の左側にスタンドで固定している携帯を操作し始めました。以前は、このようにスマートフォンが運転席の横に固定されているのを見たことがなかったのですが、これを見て、中国でのスマートフォン普及率が年々上がっているのを身をもって実感しました。

 また、別の機会でタクシーに乗っていた時、運転手のスマートフォンから数分おきに「ディディ打車」、「ディディ打車」と着信音のような音声が流れてきました。「なんだろう?」と思って聞いていると、「ディディ打車」という音声の後で、「今○○にいます。○○に行きたいです。」という中年女性の声が流れました。あ、これはもしかして、うわさのタクシー配車アプリ!スマホアプリでタクシーを呼び出せるとは、北京でタクシーを見つけるのも楽になりましたね。

 ・・・と、そう思い始めたのもつかの間、次に乗ったタクシーの運転手はスマートフォンをあまり好まない方のようで、携帯で地図を見せようとしたら、「地図じゃなくて口で説明してほしい」と言われてしまいました。中国では情報技術の発達により、コミュニケーションのあり方が変わってきているのを感じますが、まだまだ「口から発する言葉」が重視されることには変わりがないようです。(林)

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