20世紀初め、中国五四運動の影響で、多くの若い女性は女性解放という新思想の洗礼を受けました。これにより自由な結婚や平等な教育などを勇敢に求め始めます。中でも、林徽因や張愛玲などがこの時代の新しい女性の代表となりました。今回の中国メロディーは、これらの女性の物語を楽しみましょう。

林徽因

　1930年代の才女と言ったら、林徽因という名前がまず浮かびます。彼女は中国女性建築家の草分けであり、中華人民共和国の国章、人民英雄記念碑の設計者の一人として知られています。

　林徽因は中華民国時代の政治家・林長民の長女として生まれ、その美貌と才能は評判になりました。15歳の時に父親と共にヨーロッパ各国を訪問した際、ヨーロッパ文化に接し、建築芸術に深い興味を持ちます。その後、アメリカのペンシルベニア大学で建築学を学び、帰国後は、東北大学、燕京大学などで教鞭をとります。新中国成立後、彼女は清華大学で建築学の教授になりました。その美しく上品で、多才多芸な姿でその時代のアイドルとなりました。

　そんな才色兼備な林徽因は同じく建築家の夫・梁思成と共に各地の僻地を歩き、古い建築を調査・整理したことから、中国建築史の祖とも呼ばれます。

張愛玲

　続いて1940年代において最も独特な女性作家張愛玲を紹介します。彼女の小説は一つの世界を形成し、その作品からは、卓越した才能と言葉では表せない寂しさが伝わります。

　没落した貴族出身の張愛玲は、学生時代に天才文学少女と讃えられ、香港大学を卒業した後、故郷・上海に戻りました。1943年から1944年に多くの小説と散文を発表しました。この時、日本軍に占領されていた上海で彼女の文学的才能は売国奴政権の側にいる胡成蘭に評価され、24歳の張愛玲は、13歳上の胡成蘭と文学を通して引かれ合い結婚しました。しかし、この結婚はわずか3年後に破局しました。

　当時、上海で最も人気ある女性作家張愛玲と売国奴政権の要員との熱愛は論争を呼びました。二人が出会ってから破局に至るまでの様子はまさに一つの物語と言えます。自分の運命について張愛玲は「人生はまるで華麗なドレスのよう。でも、その中に多くのシラミがいる」と言いました。

　1990年代、張愛玲と胡成蘭の恋物語をアレンジした映画「滚滚红尘（レッドダスト）」は1990年に台湾のアカデミー賞・金馬奨の8部門で最優秀賞を受賞しました。映画の中のヒロインのストーリーは張愛玲の運命とよく似ており、美しく悲しいです。

李香蘭

　李香蘭は1930年代、1940年代に中国の芸能界で活躍した女優です。日本人の両親を持ち、山口淑子という本名を持つ彼女は、中国で生まれ育ちました。彼女は「夜来香」という曲でデビューし、美貌と澄んだ歌声で人気を博しました。

　抗日戦争が勃発した後、李香蘭は日本人であることを隠して、中国の人気女優として歌や映画で活躍しました。日本軍の植民地統治を讃える映画に出演し、映画では日本軍人を慕う中国人女性を演じ、日本の戦争を宣伝する道具となりました。日本の敗戦後、李香蘭は「中国人を侮辱し、日本人にへつらう中国人」として中華民国の軍事裁判にかけられましたが、最終的には日本人であることが証明され、日本に戻りました。

　戦後、彼女は政治家として侵略戦争時代の悔いを反省するよう、小泉元首相の靖国神社参拝を批判しました。彼女は、「日本は私に生命を与えたけれど、中国は私に中華の心を与えてくれた」と語っています。

番組の中でお送りした曲

1曲目～　明月千里寄相思(名月は思いを馳せる）

　この曲は1940年代に上海で流行した歌で、当時、有名歌手・呉莺音が歌って大ヒットしました。今でも広く人々に愛されています。

歌詞

　夜の景色がおぼろげになり

　天の果ての新月はまるでかまのよう

　昔を思い出せば

　さながら夢のよう

　あの夢をもう一度探す

　一体どこにあるのだろうか

2曲目～　滚滚红尘(レッドダスト)

　1940年代、上海での最も人気ある女性作家・張愛玲と売国奴政権の要員・胡成蘭の恋物語をアレンジした映画「滚滚红尘（レッドダスト）」の主題歌です。歌は恋に悩む女心を歌い上げています。

歌詞

　軽い気持ちのあなた

　若くて未熟な私　

　浮き世でめぐりあう二人の縁　

　何も言わず、何時しか引かれ合う

3曲目～　何日君再来（あなたはいつ帰る）

　この曲は1940年代の流行歌で、愛する人との別れを歌っています。

歌詞

　美しい花はいつも咲くわけではない

　美しい景色はいつもそこにあるわけではない

　愁いが重なっても笑みを浮かべて

　そっと涙を流し

　今宵別れた後

　あなたはいつまた帰って来るのでしょう

　さあ、飲んで

　飲み干したら、また話しましょう