ナビゲーター：黄競

　子供時代に武侠の夢を抱く中国人は多いでしょう。中国では誰もが、卓越した武芸を身に付け、敵と勇ましく戦う英雄になることを夢見たことがあるのではないでしょうか。今回の中国メロディーは引き続き、青春の成長の記憶を刻む武侠メロディーを聴きながら子供時代の古き夢を温めましょう。

　男性に負けない「女侠客十三妹」

　1980年代、大ヒットした映画「少林寺」によって武侠映画ブームに火がつきました。当時、映画の中の武芸に優れた主人公・覚遠と美しいヒロイン・白無暇は少年少女のアイドルとなりました。多くの子供が映画を見た後、少林カンフーを学ぶために少林寺へ出家したことは、当時大変な騒ぎとなりました。

　特に、ヒロインの美人侠客・白無暇の端麗な容姿と優れた武芸は多くの観客の心を虜にしました。その後、女侠客を題材とした武侠映画やドラマが相次いで出てきました。その中で、例えば「侠女十三妹」は多くの映画ファンを魅了しました。当時、中学生だった私はこのドラマを見るために、宿題さえも忘れたほどです。今、このドラマのテーマソング「巾帼英雄（女性英雄）」の気迫のこもったメロディーを聴くと、少女時代の美しい思い出がふつふつとよみがえってきます。

　武侠音楽の定番の名曲「笑紅塵」

　1990年、金庸の武侠小説をモチーフにした映画「笑傲江湖（スウォーズマン/剣士列伝）」が大ヒットし、3年後、その続編「スウォーズマン/女神伝説の章」が武侠映画の再興を促しました。主題歌「笑紅塵（俗世を笑う）」は女侠客の洒脱で、拘束を受けない性格をうまく表現し、武侠音楽の定番の名曲と言われています。ブリジット・リン演じる武道達人・東方不敗が俗世を見下ろし、俗人を笑い、悠々自適な暮らしを求める様子がこの主題歌を通じて鮮やかに表現されています。

　私はこの歌を何回聞いても、毎回感動します。その素朴な歌詞は女性の心を細やかに表現しました。でも、女性の感情をこれほどうまく表現する歌詞を作曲したのが、なんとひげだらけの男性作曲家・李宗盛だなんて、多くの人が不思議に思っていることでしょう。

　1世代の若者に影響を及ぼした「大話西遊」

　1994年、武侠映画「大話西遊（チャイニーズ・オディッセイ）」が時代を超える喜剧として大学生の間で人気を集めました。当時、この映画を見たことがない人は時代後れと見なされるほどでした。映画の中の多くのセリフは今でも映画ファン達によって楽しげに語られます。例えば、ヒロイン・紫霞仙女が主人公・至尊宝に騙されたことに気が付いた後、至尊宝を殺そうとし、それに対し至尊宝が目に涙を貯めて彼女に告白したセリフ「今まで誠実な愛が私の目の前にあったのに、私は大切にせず、失う時になって初めて後悔する。たぶん世間のどんな苦しいこともこれよりは辛くないでしょう。もし、もう一度機会があれば、私は彼女に「君を愛する」と言いたい。もし、この愛情に期限を定めるならば、1万年であればいいと望みます」。今、この台詞は武侠映画の中で最も有名なセリフとなりました。

　今年は映画「大話西遊（チャイニーズ・オディッセイ）」の上映20周年に当たり、映画館で再び上映されています。30代、40代の人々は映画館で、テーマソング「一生所爱（生涯の愛）」の懐かしいメロディーに伴い20年前の古い映画を温め、そこから青春時代の思い出を呼び覚ますのです。

　酒における天と地　「酔拳」

　1994年、ジャッキー・チェンが主演した武侠映画「ドランクモンキー 酔拳」が上映されました。ジャッキー・チェンの優れたカンフーはもちろんこの映画における最大の見所ですが、その主題歌も映画に彩りを添えました。20年後の今日、映画のストーリーはすでに人々に忘れられてしまいましたが、ジャッキー・チェンが自ら歌った主題歌は今でも多くの映画ファンの心の中に残っています。映画の中で、ジャッキー・チェンの澄んだ力強い歌声はカンフーとうまく融合し、武侠音楽の魅力を充分に楽しむことができます。