と、ある日、地主は韓さんに石炭運びをやらせたが、帰ってくる途中の坂で石炭を積んだ荷車を引く驢馬がひっくり返り、荷車が倒れそうになった。このとき、韓さんは後ろで荷車を支え、自分だけの力で荷車を坂の下まで押していったので、これを見ていたほかの作男がびっくり。早速このことを地主に伝えた。
これを聞いた地主は驚き、韓さんには野良仕事をやらせず、自分の商いでもある布屋の布を運ぶときの用心棒の一人とした。
こうして用心棒になった韓さんは布をいっぱい積んだ数台の荷車について都に向った。
そして途中で山賊に出くわし、他の用心棒は山賊にやられてしまったが、得物がない韓さんは、道端の太い木を引っこ抜くと、それを細い枝を扱うように振り回したので、山賊どもは見事追い払われてしまった。
これをあとで聞いた地主は、韓さんに褒美をたくさん出したので、韓さんはその金で鉄を買い、鍛冶屋に行って自分の背丈よりもはるかに長く、重さが大きな牛ぐらいはある鉄の棒を打ってもらい、これを得物として使うようした。実は韓さん、棒術を習ったわけでもなく、ただその重い鉄の棒を力任せに思いっきり振り回すだけだったが、それだけでも相手になるものはいなかった。こうして韓さんの強さが認められ、「鉄棒の韓」と呼ばれるようになり、山賊たちも彼のことを恐れた。
韓さんは荷車の上に鉄棒を立てに挿し、人にかいてもらった韓の字がある旗を鉄棒に結んだので、これを遠くから見た山賊どもは「これはいやなやつにが来た」と手を出さずに眺めるだけだったので、荷車は何事もなく目的地に着くのであった。
それから数年がたったあるとき。韓さんはいつものように用心棒として都に来て宿に住み込むと、ある大男がたずねに来た。
「拙者は山東の生まれで白二と申すもの、そこもとはご存知かな?」
これに韓さんは、きょとんとした。
「ご存じないらしいな。実はそこもとは鉄の棒をうまく操られると聞いたので、その技を拝見にまいった。どうでござる?」
「白二さんとかいったね?おいらの技を見て何する気かな?」
「実は、これまで拙者を負かせるものにはあっておらんのでのう」
「ふーん?それで?」
「まずは、そこもとの鉄の棒を拝見できんかな」
「ああ。かまわないよ。外にある荷車に挿してあるから自分でもってみな」
これをきいた白二は早速荷車から韓さんの鉄棒を軽々と引き抜いて自分でも振ってみた。これをみた韓さんは、ほう、自分と同じ力持ちだなとおもった。
白二はいう。
「ははーん。これがそこもとの鉄の棒でござるか。どうでござろう。この棒で拙者を思い切り殴ってみないか?もし、うめき声を上げたら拙者の負けとしておとなしくここを離れる」
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