【CRI時評】企業側はなぜ米国での工場建設を放棄または延期したのか

2023-12-26 11:20:34  CRI

 「慎重に検討した結果、現時点では用地開発を進めないことを決定した」。米テスラの電池サプライヤーであるパナソニックエナジーはこのほど、米オクラホマ州での電気自動車(EV)用電池工場建設を見送ると明らかにした。これは特殊事例ではない。

 1月には韓国のLGエナジー・ソリューションが米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同で米国に電池工場を建設する計画を「無期限で棚上げ」し、7月には中国台湾地区の台湾積体電路製造(TSMC)が熟練技術者の不足を理由に米国での生産開始が2025年にずれ込むと明らかにした。10月にはホンダがGMとの量販価格帯EVの共同開発中止を発表し、米フォードはケンタッキー州で予定していた韓国SKオンとの電池工場共同建設を延期した。米国政府は企業の投資と工場建設を誘致するために一連の奨励策や補助金政策を打ち出したが、なぜ企業側はそれに反する「市場の答え」を出したのか。

 まずそれらに必要なコストについて見ると、パナソニックは、米カンザス州の工場建設コストが予想を上回ったため、オクラホマ州の工場建設が難しくなったとした。ホンダの三部敏宏取締役代表執行役社長は今回の見直しの理由について、コストが重要な要素の一つであると率直に明らかにした。企業の「コスト難」は、米国のEV産業チェーンの現状を反映している。米国の電池材料採掘・加工における輸入依存とエネルギー・土地・労働力などの要素費用の高さが企業の投資支出を押し上げている。TSMCの機械設置が現地の熟練技術者不足により困難であることは、米国の製造業における労働力不足と空洞化のジレンマを一定程度反映している。

 次に投資収益について見ると、企業が手厚い見返りを得るために強大な消費者市場を望むのは当然のことだ。しかしパナソニックは10月、自動車用電池を製造するエネルギー部門の通期営業利益予想を15%下方修正した。さらに米国のインフラ整備も消費者に冷や水を浴びせた。米国の調査会社J.D.パワーによると、米国の公共充電スタンドの多くに欠陥があり、2022年には米国のEV所有者の充電失敗率が20%に達した。航続距離の短さ、電気料金の高さ、送電網の不安定さに米国の消費者は悲鳴を上げており、道理で第3四半期の米自動車市場におけるEVのシェアが7.9%にとどまるわけだ。

 それだけではない。米国は経済の議題を政治化している。「CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)」は米国内に工場を建設する際に企業が排他的選択をしなければならないと規定し、「インフレ抑制法」は2024年以降に米国で生産されるEVに中国などで製造または組み立てされた電池モジュールを含めてはならないと規定している。

 米国の民衆がさらに懸念しているのは、産業を米国内に強制的に「引き戻す」と、消費者コストが増加するだけでなく、巨額の支出によってインフレが加速する可能性があることだ。米国メディアによると、今年のクリスマスはプレゼントの価格が上がり続けたため、米国人の3分の1超がプレゼントを諦め、小規模企業経営者の42%がクリスマスボーナスを支給できないと回答した。この一連の反応の中で、市場がどのような選択をしたのか。答えは言わずと知れたことだ。(CRI論説員)

ラジオ番組
KANKAN特集