【観察眼】「ジョン・ワン」らの悲哀

2023-06-17 13:30:17  CRI

 中国では先週、大学統一入学試験「高考」(日本の大学入学共通テストに相当)が実施された。受験生は未来へのあこがれを胸に抱いて試験会場に入り、人生の中で大切な選抜を迎えた。中国では、入試の点数が大学の合格ラインに達していれば、志望する大学に進学できる。しかし国によっては、このような当たり前のことが、至難の業だ。

 先日、米国でも中国や日本と類似した仕組みの大学入試が行われた。フロリダ州の18歳の中国系米国人高校生のジョン・ワンさんは、1600点満点中、1590点の高得点を獲得した。高校時代の平均点数は4.65点(5点満点)で、卒業生の中で2位だった。ワンさんは同様に課外活動の実績も素晴らしかった:米国で人気の競技クイズ大会「クイズ・ボウル」のチームリーダーを務めたことがあり、全米ジュニアゴルフ選手権に参加したこともあり、また、新設のソフトウェア会社の経営者でもある。そんな優秀な彼が名門大学6校から次々と不合格とされた。これについて大学側は明確な理由を明らかにしていないが、ワンさんは、「不合格になったのは予兆がなかったわけではない。友人や学校の先生からはアジア系として合格するのは非常に難しいと言われていた」と指摘した。FOXニュースも、「ジョン・ワンさんがアジア系米国人であるが故に、優秀な大学に門を閉ざされた」と報じた。

 そう、ワンさんが名門校から拒否された理由は、基本的にアジア系という彼のアイデンティティーのためであると判断できる。

 米国でマイノリティ、特にアジア系が差別や憎悪犯罪、凶悪犯罪に遭うことはもはやニュースにはならない。ネットで検索すれば、このようなことが頻繁に起きていることが分かる。2020年6月15日、ロサンゼルスにある日本人が経営する調理器具店の店頭に「ここはアメリカだ。おまえらが売っているものは何もいらない」「日本へ帰れ、猿!」「言うことを聞かないなら、店を爆破するぞ」などの脅迫や侮辱的な言葉が書かれた紙が貼られた。2021年2月25日、ロサンゼルスにある東本願寺ロサンゼルス別院が放火され、破壊される被害に遭った。2022年1月15日、ニューヨークの地下鉄の駅で電車を待っていた中国系女性が線路に突き落とされ、進入してきた電車に巻き込まれて亡くなった。

 一般市民のみならず、スポーツの世界大会で米国のためにチャンピオンを勝ち取ったアジア系でさえも、残念ながら米国内では「排斥される」運命から逃れられない。昨年行われた北京冬季オリンピックのフィギュアスケートで優勝した中国系米国人のネイサン・チェン選手である。彼のパフォーマンスに観客やスポーツ界から拍手喝采が送られる一方、米メディアの報道は決して全てが喜ぶべき内容ではなかった。例えばニューヨーク・タイムズは、「米国のフィギュアスケート界にはアジア系が明らかに多すぎる」「米国人を過剰に代表している」という主旨の記事を発表した。2大会連続で冬季オリンピックの金メダルを獲得し、「天才スノーボーダー」とも呼ばれた韓国系米国人スノーボード選手のクロエ・キムも、同様に人種差別的な嫌がらせを受けてきた。月に数百通の嫌がらせメッセージを受けた時期もあり、外出時には身を守るためにいつもスタンガンや催涙スプレーを身につけていた。

 米国社会は移民で構成された社会である。アジア系は米国の政治、経済、文化の発展を促すために重要な役割を果たしてきた。だが、米国の「白人至上」主義は、アジア系への差別や抑圧を至る所で引き起こしている。自由や平等の模範を自称してきた国が、基本的な教育上の公平さえ保証できないで、民主や文明を語る資格はあるのだろうか。不平等な扱いを受けたのは、ジョン・ワンさんが最初ではないし、決して最後でもないと思う。(CMG日本語部論説員)

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