【観察眼】世界一の自由民主国家が産んだ、女性の権利奪う判決

2022-07-12 09:57:54  CRI

 7月11日は世界人口デー。1987年の世界人口50億人突破をきっかけに、人口問題への関心を喚起するべく国連が1990年に制定した記念日だ。この日を前に米連邦最高裁判所が下したある判決が、世界の注目を集めている。人口を増やすことを優先し、女性の権利をないがしろにする――それが、米国の司法の考えなのだろうか。

 米最高裁が6月24日に下したのは、「人工妊娠中絶を連邦憲法上の権利としては認めない」とする判決だ。これは1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆すもので、これにより、女性の中絶権が憲法で保護されなくなる。今後、中絶が合法かどうかは各州の裁量に委ねられることになる。米国民が半世紀にわたり手にしてきた権利は、最高裁の鶴の一声でいともたやすく失われた。

 この判決には世界から非難が集まっている。その中には米国の同盟国も少なくない。英国のジョンソン首相は、米連邦最高裁の判決は「大きな後退」だと述べた。フランスのマクロン大統領は、「私は米最高裁の判決で傷ついた女性たちの肩を持つ」と表明。カナダのトルドー首相は、米最高裁の決定は「恐ろしいものだ」とした。さらに国連や世界保健機関(WHO)の高官からも批判の声が上がっている。米国内のみならず、欧州の多くの国でも抗議デモが起きた。

 米メディアの分析によると、米国ではこれから20を超える州が中絶を制限または完全に禁止することになり、各州に住む出産適齢期の女性3000万人以上に影響を及ぼす可能性があるという。すでに、中絶手術の予約をキャンセルする診療所が出ており、一部では閉鎖も始まっている。これらの州に暮らす中絶を望む女性は、中絶が認められている州に行くか、ネットで中絶薬を購入するなどして対応しなければならないが、それならまだ良い方だ。貧困層やマイノリティなど弱者層の女性は、死の危険を冒して闇の診療所に助けを求めざるを得なくなる。

 米最高裁の判決が女性に及ぼす影響はすでに表れ出している。オハイオ州では、性暴力を受けて妊娠した10歳の少女が中絶を拒否され、長距離を移動してインディアナ州で中絶手術を受けた。性暴力の被害を受けて、傷ついた少女をいたわるどころか、さらなる負担を与える――これが世界一の超大国、「最も人権が保障される」米国でのできごとなのだ。

 今回の判決の背景には、米最高裁で保守派が再び優勢になったこと、米国の保守派とリベラル派の人権分野における観点の二極化、および民主党と共和党の駆け引きがある。それは、米国の州と州、州と連邦政府の間の不和の現れと言えよう。米国社会が抱える歪みと分断の深刻化が改めて露呈された形だ。

 英BBCは記事の中で「今日の米国は、1つの国の中に2つの分断された民族集団があるようなものだ。両者は全く異なる価値観、信仰、目標を持っている。今、彼らはお互いに、より遠くへと離れていっている」と指摘した。また、米NBCが今年5月に発表した世論調査結果によると、回答者の75%が「米国は間違った方向に進んでいる」と考えている。

 米国の女性は中絶権を必要としている。しかし、世界ナンバーワンの自由民主国家を自負する米国は、国民の反対を押し切って、中絶権の剥奪という時代遅れの判決を“産み出した”。このような米国がいまさら「民主主義」「自由」「人権」を語ろうとも、世の中の笑いものになるだけであろう。

 今年の世界人口デーのテーマは、「すべての人に権利と選択肢を確保する」というもの。この日を前に権利を奪われた人々が気の毒でならない。(CRI日本語部論説員)

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