北京
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バイデン米大統領は10日、前政権が発動した対中追加関税の見直しと撤廃を検討していると明らかにした。2018年に米国が中国に貿易戦を仕掛けてから3年余りが経過した。米国による対中追加関税は、まるで自分で持ち上げた石を自分の足に落としてしまったかのような、茶番劇じみたものとなっている。
米国の4月の消費者物価指数(CPI)は8.3%も上昇し、過去40年間で最高となった。バイデン政権は利上げや石油備蓄の放出などの措置を講じたものの、物価に目立った低下は見られなかった。バイデン氏自身も5月10日、「家計がインフレに圧迫されていることを認識している」と述べ、インフレ対策を最優先する方針を明らかにした。
事実、中国を対象に仕掛けた貿易戦争は、これまでのところ、米国の貿易赤字を減らすことにはつながっておらず、むしろ米企業と消費者の支出を増やし、インフレ率を押し上げた原因の一つとなっている。ワシントン側の発表では、2021年に米国のモノの貿易赤字は1.1兆ドルという記録的な額に拡大しており、うち、対中貿易は約1/3を占めている。さらに、対中追加関税の発効により、米国企業は1.7兆ドル以上の損失を被り、家計支出を年間1300ドル増加させた。このほか、米商務省の報告書によると、中国を対象にしたモノの貿易赤字は2021年に3553億ドルに達し、2018年の4182億ドルをわずかに下回るにとどまった。そのうえ、モノとサービスを合わせた対中貿易赤字の総額は8591億ドルに上り、史上最高を更新した。
米国が中国から輸入しているものの多くは、国民生活に直結する日用品であるため、追加関税は国民生活を直撃している。統計によると、米国の中国からの輸入総額は2021年に5060億ドルとなった。中国製品に課す関税は平均で約16%増えているため、米国人は中国製品を購入する際に約800億ドルを余分に支払ったということになる。
このような追加関税は、経済的な視点から見ればとっくに撤廃されているはずのものだ。それがここまで長引いている理由は、バイデン政権が政治的な思惑をもってこの問題に向き合っているからだ。追加関税の効果が出にくいことは承知の上で、貿易上のいじめ行為や、保護主義的なやり方を平然と選び取る。そうすることで自国の優位性を守り、中国とのデカップリング(切り離し)を推し進め、中国の経済、社会、技術の発展を抑制する──それこそが、米国の真の狙いだろう。だが、現実に目を向けると、米国内の声は無視できないレベルになりつつある。
CNNが今月初めに発表した世論調査によると、米国人の大半はバイデン氏の政策が経済にダメージを与えていると考えている。米労働統計局も、インフレのエスカレートが消費者を崖っぷちに追いやっており、経済成長も脅かされていると指摘している。米政治の行方を決める中間選挙が11月に控える中、バイデン政権にとっては、いかにしてインフレ問題をコントロールし、投票結果に影響を及ぼさないようにするかが死活問題である。そして、残された時間は決して長くはない。
世界的なパンデミックは継続し、ロシア・ウクライナ情勢の不透明感が世界経済とコモディティ価格に深刻なダメージを及ぼしている。これを背景に、バイデン政権は物価引き下げのためにあらゆる手を打とうとするだろう。そこで選択すべきなのは、対中関税の引き下げもしくは完全撤廃だろうと、アナリストたちは見ている。
中国外交部の趙立堅報道官はこのほど、バイデン政権の姿勢について「中米経済貿易の本質は互恵・ウィンウィンであり、貿易戦争や関税合戦に勝者はいない。米国の一方的な追加関税は中国に不利益なだけではない。米国にも、世界にも不利益をもたらす」と指摘した。現に、米中貿易戦争が始まってからの3年間で、米国の対中輸出は毎年、貿易戦前(2017年)のレベルを下回っている。米国がこの期間に失った雇用機会は24万人分に上るとみられている。
保護貿易主義と貿易上のいじめを徹底的に放棄し、多国間の自由貿易体制を共に守り抜く。それこそが、中米両国、そして、現在の世界経済が不況のどん底から抜け出すための前提である。対中追加関税問題の見直しを、一時の政治的目的を満たすためのものにしてはならない。民意を直視し、問題の深刻さを深く認識し、抜本的な解決策を出すことが求められている。中米が一緒になって、世界経済の発展により多くの安定性をもたらす、それこそがたった一つの正しい選択肢だ。
米政府が対中追加関税を撤廃すべき時が来ている。
(CRI日本語部論説員)