“爨”という字、あなたは読める? 北京の爨底下村で連休を過ごす

2022-05-04 17:35:01  CRI

 突然ですが、こんな漢字を見たことはありますか?

 この「爨」という字、中国語ではcuān(ツアン)と発音し、日本語では「サン」という音読みがあるそうです。中国でも見かけることの少ない字です。

 上の部分は「興」、下の部分は「木」や「火」という字で構成され、「火をおこす」「炊事をする」「かまど」という意味があります。 

 この字を冠した「爨底下村(さんていかそん)」という古い村落が、北京の西郊外にあります。明清時代から続く、400年以上の歴史がある村です。「爨の底の下」とは、いったいどういう意味なのでしょうか。 

 今年のメーデー(労働節)の連休(4月30日〜5月4日)は、コロナ禍を受けて、できる限り北京市を出ないことが推奨されています。というわけで、以前から行ってみたかった、この爨底下村に行ってきました。

 車で西郊外の山に入り、きれいに整備された山道をどんどん進んで行きました。90キロほど走ったところで、村落が目の前に現れました。四方を山に囲まれ、まるで別世界のような雰囲気です。上から眺めると、一面グレーの瓦屋根が広がっていて、古き良き時代を物語っているようにも感じられます。連休中ではありますが、観光客は意外にまばらでした。

 この村落は、明の時代に山西省からの移民によって作られ、後に交易路ができたことで栄えました。周辺の三つの山がまるでかまどの三本の脚のように見えることから、かまどを意味する「爨」という地名になりました。高い位置にある村が「爨頭」、そして、下のほうにあるこの村は「爨底下村」になったわけです。

 ちなみに、村民の9割は「韓」という苗字で、韓は「寒」と同じhán(ハン)という発音であることから、村の人々は冬の厳しい寒さを避けるという意味を込めて、温かいかまどを意味する「爨」という字を好んで使用したとも言われています。確かに、標高650メートルのこの村では、400年前の寒さはさぞ厳しかったことでしょう。

 明清様式の建築群がほぼ完全な状態で残っている村落はここだけだと言われています。北京の胡同(フートン)ではおなじみの四合院も、山奥ではこぢんまりとした作りになっているのが印象的でした。

 石畳の狭い通路に、石造りの階段と塀。

 上へと登るほど、大きな家があります。昔のお金持ちも、見晴らしの良い場所を好んだのでしょう。

 いま、爨底下村には民宿がたくさんあって、気軽に食事をしたり泊まったりすることもできます。市内からちょっと足を延ばして、明清時代の情緒を残すこの村で、日常から離れるひと時をゆっくりと過ごしてみるのもいいでしょう。(取材:王秀閣 校正:梅田謙)

 場所:北京市門頭溝区齋堂鎮

 距離:約90キロ

 アクセス: 109国道で約2時間

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