北京
PM2.577
23/19
ウクライナ危機の発生から1カ月以上が過ぎた。早期停戦、民間人への被害リスクの回避――言うまでもなく、これが中国を含めた世界多数の国の共通した願いである。しかし、そんな中、欧州で起きた危機を口実に、日本が国家戦略で示したいくつかの動きに隣国として関心と警戒をせざるを得ない。
まずは、軍拡の論調と核共有(核シェアリング)を唱える動きだ。中でも、米国の核兵器を日本に配備して共同運用するという「核シェアリング」は、ウクライナ危機が勃発してから、安倍晋三元首相から言及された問題提起である。これに対し、岸田文雄首相は、「『保有しない、製造しない、持ち込まない』という非核三原則の立場から、日本は核兵器を『共有』することに同意できない」と回答した。しかし、自民党の高市早苗政調会長は、「核シェアリング」政策について、国内でも議論すべきと提言している。日本はすでに高いレベルの通常防衛力を有しており、敵基地攻撃能力の保有を政策的に議論を開始するとなれば、「専守防衛」の原則を完全に放棄しようとすることを意味する。しかし、日本が軍事的縛りから徹底的に解放されれば、アジア太平洋地域の安全保障枠組に重大な影響を招きかねることが予想される。
第二に、日本国内における平和憲法改正に対する強硬的な論調が台頭し、憲法改正のプロセスが加速する可能性がある。岸田首相は改憲議論の進展に期待し、中でも、戦力の不保持と交戦権の否認を明記した憲法第九条の改正に主眼が置かれるとみられている。第9条が改正されれば、隣国の戦略的安全保障に少なからぬ心理的プレッシャーを与え、同じく地域の安全保障構造にもたらす影響が懸念されるだろう。
第三に、「国連の常任理事国入り」と新たな国際秩序の枠組み構築に向けて示された強い姿勢である。2004年から、日本の首相は国連総会で演説する際、「国連改革」を呼びかけることが慣例となっている。ウクライナ危機が勃発してから、日本はこれまで以上に前向きな姿勢で「国連改革」を訴えるようになっている。岸田首相も林芳正外相も相次いで、ロシアによる「特別軍事行動」を非難し、「新たな国際秩序の枠組みを構築する必要性を浮き彫りにしている」と強調している。しかし、歴史を振り返れば、米国がイラクを不法に侵攻し、北大西洋条約機構(NATO)がユーゴスラビアを不法に空爆した際に、日本はそうした声を上げることはなかった。日本が声高に求めようとしている「新たな枠組み」は、米国追随のものに過ぎないことをあらわにしている。
第四に、ロシアとウクライナの間の紛争を台湾海峡問題と意図的に関連させ、中国の脅威を喧伝し、地域の緊張情勢を作り出そうとしている。最近、総理特使としてマレーシアを訪問した安倍晋三元首相は講演の中で、「アジアでも力による一方的な現状変更の試みや経済的威圧は深刻な脅威だ。一致して反対の声を上げるべきだ」と呼び掛けた。言うまでもなく、これは中国を念頭にした発言で、中国への強い不信感がにじみ出ている。
しかし、このような当て付けは実態と甚だしくかけ離れている。台湾問題とウクライナ問題との本質的な違いは、後者は主権国家同士の紛争であるのに対し、前者は完全に中国の内政である。真に台湾の前途と運命に関心があるなら、ダブルスタンダードではなく、中国が主権と領土保全を守るための行動を尊重すべきではないだろうか。
なお、ウクライナ問題について、中国はこれまでに「この問題には複雑な歴史的背景と経緯があり、事態がここまでこじれたのは中国が目にしたくないことである」と繰り返し姿勢を表明してきた。そして、中国は共同、総合、協力、持続可能な安全保障観を提唱し、引き続きウクライナ情勢の緩和を進めるために建設的な役割を果たしていく姿勢も表明している。
平和を守ることは人類の共通した職責である。中日は引っ越しのできない隣国であるだけに共に平和を守る重責がある。ウクライナ危機を口実に、アジア太平洋地域の安全保障情勢を意図的に荒立てたり、混乱を作り出そうとするいかなる企ても実現はできない。
(CRI日本語部論説員)