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清華大学教授・日本研究者 劉江永さん(下)

2010-04-30 10:52:28     cri    

  歴史を乗り越え 心の和解を実現せよ
 中日関係のいま 東アジアのこれからを聞く(下)

■日本経済を取り巻く構造的変化

――昨夏、日本で政権交代が行われました。このことは、今後の中日関係、ひいてはアメリカをも含めた三国の関係にどのような影響を及ぼすと見ていますか。

 まず、戦後の日本にとって、今、いかなる大国にも左右されず、けん制されることなく、自主的に日中の友好と協力を推し進める時期を初めて迎えたと思います。
 民主党政権は「対等な日米同盟関係」を目指そうとしていますが、その意味するところは、日本は自国の利益と自らの主張や認識に基づいて、自主的にアジア近隣との関係発展を推し進めていくということです。   
 二つ目、世界規模の構造変化です。金融危機で弱まったアメリカに対して、中国経済は好調を保ち、人民元の地位も上昇し続けています。中国はいずれ日本を抜いて、世界2位の経済大国になり、さらに、2030年頃にアメリカを抜く可能性もあります。まさに、今はアメリカの下降期と中国の上昇期という大きな変化の真っ只中と言えます。
 去年、先進8カ国首脳会議の代わりに、主要20カ国G20体制が発足しました。日本は、将来の世界でより大きな空間を手に入れるため、アメリカ一辺倒ではもうやっていけません。
 中国の発展が日本にもたらしたメリットに対して、民主党政権をはじめ、自民党の有識者もはっきり理解しています。こうしたマクロ的な変化を背景に、日本は外交上、より大きい空間を手に入れるためにも、中国との戦略的互恵関係の推進に出ることが必要になるでしょう。

――日本は「中国要素」への認識が高くなりつつあるということですか。

 その通りです。戦後、アメリカは、日本に軍事面では安全保障、経済面では巨大な市場を提供しました。言い換えれば、日本の成長は金融資本主義を土台にした「アメリカ・モデル」に支えられての成長でした。しかし、そのような「アメリカモデル」は挫折し、短期間に蘇る見込みはありません。
 その一方、中国はすでにアメリカを抜いて、日本最大の貿易相手国となっただけでなく、日本の最大の輸出先にもなる見込みです。安全保障のことはさておき、日本は経済において、中国を含めたアジアにより多く依存するという構造的な変化が起きています。
 このような利益構造の変化こそ、日本外交の新しい研究課題と言えます。この中で、何よりも注目してほしいことは、中日米3国はいずれも国家モデルの転換期にあることです。

■日本は「国家モデル」の転換期にある

――「国家モデルの転換」と言いますと?

 日本は1868年の明治維新以降、これまで3回ほどモデルチェンジがあり、今は4回目の真っ最中にあると思います。
 1回目は、明治維新による封建制幕府社会から近代資本主義への転換でした。が、すぐに帝国主義と軍国主義に走り、対外拡張と侵略の道を歩んで、失敗に終わりました。
 2回目は、1945年以降の平和発展の道。外交や安全保障をアメリカに頼り、軍備よりも経済を優先させる道でした。反共主義かつ保守的で、アメリカ依存型が特徴でした。日本は東西冷戦という2極体制の下、安価な原油とアメリカの輸出市場に頼って、一躍世界第二の経済大国に躍進し、貿易立国のモデルを成功させました。
 3回目は、1980年代から2009年9月まで。日米同盟の強化を土台に、政治大国を目指すようになりました。アメリカ同調主義で国連安保理常任理事国入りを目標としました。しかし、その一方では、国内の民生問題が見落され、特に小泉政権時代には、日本の国家モデルの歪みが一層鮮明なものになってきました。つまり、日米同盟を強化すると同時に、戦争や歴史問題を誠実に反省せず、靖国問題において隣国を刺激し続けました。このような右傾化した政治大国を目指すモデルは最終的に失敗し、それにより、自民党も政権の座を失ってしまいました。 
 今回、鳩山首相の宣言した「平成維新」とは、私から見れば、まさに4回目のモデルチェンジの出発点だと思います。私はこれを「米亜を共に重視する経済・民生優先型」モデルと名づけています。少なくとも30~50年継続できれば、日本は希望の満ちる国になれます。
 ただし、もしこれについて、日本で社会的合意ができず、政治も長期にわたって不安定となれば、日本経済も衰退し、全面的で複合型の危機がまた避けられないのではないかと思います。

――このようなモデルチェンジが成功する可能性は?

 決め手は日本だけではありません。国際情勢やアメリカのモデルチェンジにも影響されます。また、中国も変わり続けています。30年前までまだ立ち遅れていた中国はいまや世界第2の経済大国になろうとしており、日本からODAを受けていた中国はいま、国際貢献を考えるようになっています。経済力のみならず、中国はまたGDP重視型の経済成長から、より均衡がとれクリーンな発展に転換していくという課題も抱えています。産業構造の調整や人々の意識の転換も含まれ、一種の自己改善が求められています。中国のこうした改善は日本と世界の発展に重要な意義があります。もちろん、逆も同じですが…

■アジアの将来はアジア人自らの創意工夫にかかっている

――多元化や多極化に向けての模索に「東アジア共同体構想」があると思いますが、この中では「主導権争い」という議論も耳にしています。

 鳩山首相の提唱された東アジア共同体はとても良い構想だと思います。経済のグローバル化や情報化が進む中、社会体制や価値観の違いを乗り越え、「友愛」精神で、お互いに尊敬しあい、共同利益と協力を求めようということを出発点にしているからです。
 そもそも、「主導権争い」なんて、ありえないテーゼです。東アジア共同体は「会社組織」ではなく、ウィン・ウィンの協力を土台に、共同発展を求めるプロセスだからです。
 地域協力のメカニズムは多様なルートがあり、多元的であって良い。それぞれの組織はそれぞれの機能を果たし、それぞれの課題に取り組んでいくことです。言い換えれば、「どちらか」ではなく、「どちらも」なのです。各種メカニズムの並存と包容主義こそ「開かれた地域主義」の中身です。
 また、イニシアティブという言葉があります。自ら進んで提案する精神を言います。主導権は特定の人や国が支配的な地位に立つことを言うのに対し、イニシアティブは平等な立場にいることが特徴です。
 東アジアやアジア太平洋地域の協力は、大国主導で実現できるものではなく、域内の中小国家のある組織「ASEAN」がイニシアティブを発揮してもらい、大国がその背後で歩調を合わせて推し進めてこそ前へと進めることができるのです。

――最後に、東アジアはどのような共同体を目指すべきとお考えですか。

 厳密に言うと、「経済・貿易」共同体と「安全保障」共同体の二つの部分が考えられるでしょう。更に「社会文化」の共同体も視野にいれるべきです。
 安全保障には複雑な問題が絡んでいます。それゆえ、東アジア安全保障共同体の構築は容易なことではありません。まずは、やりやすい経済や貿易、環境の面などから着手すればよいでしょう。
 ASEAN10カ国は数年前、2015年までに、経済、社会文化、安全保障で三つの共同体を構築するという共通認識に合意しました。東北アジアにもきっとこのような共同体が実現できるでしょう。たとえば、その延長線で「10+3」という枠組みの下で、「持続可能な発展のための東アジア経済共同体」、「持続可能な安全のための東アジア安全共同体」、「調和と友愛のための東アジア文化共同体」という三つの共同体構築を目指せば良いと思います。ただ、私はこれには30年ほど時間がかかるのではないかと見ています。
 だからこそ、今は既存の枠組みの中で、絶えず改善していくことで新しいモデルチェンジを提案し、新しいコンセプトを打ち出していけばよいと思っています。
 たとえば、合理的な安全保障観の提起です。すなわち、持続可能な安全保障観です。従来の伝統的安全保障分野では恒久平和を長期的に維持して行くと同時に、非伝統的安全保障分野において海賊、感染病、テロ対策などの越境的問題の解決に努めていく。こうしたことで各国の安全保障のコストを抑え、安全レベルを引き上げることができる。これはかつてなかったことでもあります。
 アジア人はアジアの課題に自ら取り組み、創意工夫をしてこそ、経済、政治、文化・社会を共に発展させることができるのです。(聞き手:王小燕)

【プロフィール】

清華大学国際問題研究所教授、副所長兼中国国際関係学会常務理事、中華日本学会常務理事、第5期中日友好21世紀委員会委員

1953年 江蘇省南京市生まれ
1979年 北京外国語大学日本語学科を卒業、中国現代国際関係研究所に勤務。
1987年 中国現代国際関係研究所で修士号を取得、日本早稲田大学の博士コースで勉強。
1988年 公務のため中途退学して帰国、中国現代国際関係研究所副研究員として招請され、のちに清華大学国際関係学科で法学の博士号を取得。
1992年 中国現代国際関係研究所研究員(教授)兼北東アジア研究室主任。
1999年 中国中央外事活動指導グループ弁公室参事官(副局長)。
2009年2月から 第5期日中友好21世紀委員会委員

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